私のやんごとなき王子様 土屋編
13日目
「おっはよー!」
校門を過ぎた所で後ろから元気に声をかけられた。
「おはよ、さなぎ」
声の主は勿論さなぎ。その表情はにこにこしていて、何だかとても楽しそうだ。
「ついについについに〜! 演劇祭本っ番っ! だねぇ〜」
大げさに手を振り上げながら言うさなぎを見て、思わず私の顔も綻ぶ。
「うん、今日で高校生活最後の演劇祭がついに終わっちゃうんだもんね。気合い入れて頑張らないと!」
「うんうん! 美羽なんて、あんなに悩んで悩んで悩み抜いて決めた担当だもんね! 10日間間お疲れ様!」
「あはは! まだ終わってないよ。でも有難う、さなぎ」
今から10日前――どこの担当に入るかを悩みに悩んでいた、あの感情が蘇ってくる。
あの頃は自分がこんな風に人を恋するだなんて、思いもしなかった――
「さーて、それじゃ後数時間後には本番! 気合い入れていきますか〜」
「うん! さなぎも頑張ってね!」
「了解です!」
元気にお互いを励まし合って、私達はそれぞれの担当場所へと向かった。
作品名:私のやんごとなき王子様 土屋編 作家名:有馬音文