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私のやんごとなき王子様 土屋編

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「もうっ」

 一人になった部屋の中で言い捨てる。

 ――でも。

 そっか、私……土屋君の事が好きなんだ。
 自分でもさなぎにからかわれるまで気付いてなかったよ。

 いつの間にか――好きになってた。

 何故だか自然に顔がほころぶ。なぜだろう? 土屋君の事を思うと、心に優しい気持ちが溢れてくる。

 押し寄せる笑顔を隠す事も出来ずに、私は大道具部屋へと向かった。



*****


 今日は1日照明担当との打ち合わせと、大道具の手直しに奔走していた。
 新しくオディール役に決まった子と、以前のオディール役の子との肌色の差によって、使用する照明が変わったのだ。当然、大道具にもその色差の影響は出る。

 1日中ドタバタと駆けまわり、やっと照明担当との修正の方向が決まった頃には日はとっくに落ちてしまっていた。
 夜の廊下には人も少なくて、皆それぞれ部屋に戻ってたり遅くまで作業していたりするんだろう。私は照明担当との折り合いを忘れないうちにと、再度大道具部屋へと向かっていた。
 廊下を少し進んだ所で足が止まる。

あれ??

 ふと人の話し声が聞こえてきたのだ。
 辺りを見回してみると、丁度大道具部屋のドアから明かりが漏れていた。土屋君、まだ作業してるのかな? だとしたら早速照明の事とか報告しておきたいな。
 とそんな気持ちで薄く開いたドアに手を掛けた時だった。

「私、土屋先輩の事が好きなんです……」 

 ――え?

 私は思わず息を飲んだ。可愛らしいけど芯の強そうなその声は水原さんのものだ。

「そう」

 細いドアの隙間から見えたのは相変わらずの尊大な態度の土屋君と、そんな彼にひるむことなくじっと土屋君を見つめている水原さん。
 その緊張がこちらにまで伝って来るようで、私は指一本動かすことも出来なかった。?