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私のやんごとなき王子様 土屋編

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 昼食の後、少し食休みを取ってから私達大道具担当は全員で海に来ていた。
 さすがプライベートビーチ。私達以外には誰もいない! なんて気持ちがいいんだろう!

「う〜〜〜〜ん、気持ちいい!」

 太陽の光を全身に浴びながら、私は大きく伸びをした。
 水着は新調出来なかったから去年と同じものだけど、気に入ってるから良しとしよう。
 辺りを見回すと、皆それぞれビーチバレーを楽しんだり、海に入って泳いだり思い思いに楽しみ始めている。

 土屋君は何をしているんだろう? あたりをキョロキョロと探してみる。
 フェリーから飛び込もうとした程の海なんだから、楽しんでいるとは思うのだけど……。

 くるりと周囲を見渡して――あ、いた!

 土屋君は早くも海に入って、何やらバシャバシャと顔を水面から出したり入れたりしていた。……何をやってるんだろう?
 
 私は少しワクワクしながら土屋君へと近付いた。
 あんなに意味の分からない人だとばかり思っていたのに、今は何だか土屋君の取る行動に興味が湧いて仕方がないのだ。

「土屋君、何してるのー?」

 海へと足を踏み入れながら、土屋君へと声をかける。
 私の声に気づいた土屋君はくるりと振り返った。思わずその顔を見て私は吹き出してしまった。

「あははは! つっ、土屋君っ、なにそのゴーグルっ!」

 だって振り返った土屋君の顔には、どこで見つけてきたの? っていう位に大きな水中メガネが張り付いていたから。
 私の笑いを特に気にするでも無く、無表情のまま土屋君はゴーグルを外す。バカっぽいそれの下から現れた、水に塗れた端正な顔立ちに今度は急速に鼓動が早まった。これじゃあバカは私だ。顔がものすごい勢いで赤面していくのが自分でも分かる。恥ずかしいっ!

「ヨツメウオって知ってる?」
「へ?」

 そんな私の表情など気にも留めない土屋君から放たれた言葉は、またも意味不明のものだった。毎度の事ながら本当に唐突な人だなぁ。

「えっと……知らないけど……」

 私がそう答えると、土屋君はつまらなそうに鼻で笑った。
 な、なんなのよー!

「はいはーい! 私、知ってます〜!」

 背後から突然かけられた元気な声に思わず振り向くと、そこには1年の女子がいた。