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私のやんごとなき王子様 波江編

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*****

 すっかり誰もいなくなった劇場の舞台の上で、私は目をつぶって今日一日を思い返していた。

 風名君と亜里沙様の演技は見事だった。でもそれだけじゃない――参加した全ての人間が報われる完璧な舞台だったと……掛け値なしにそう思う。

 潤君も本番前はあんなに緊張していたのに、始まるとそんな事はまるで嘘だったみたいに堂々としていて、輝いていた。
 まだ1年なのにやっぱり凄いな。さすが次期王子――そんな事を思ってふっと微笑んだその時――

「小日向先輩」

 もう何度聞いただろう、私の胸を温かくするこの声――
 ゆっくりと振り向くと、そこには私の大好きな潤君が立っていた。

「潤君……お疲れ様」

 私は潤君の方へと歩みを進める。
 潤君も私へと一歩一歩近付いてくる。

「先輩も……お疲れ様でした」

 相手までの距離があと2歩といった所で、どちらともなく歩みを止めた。

「どうしてここに?」
「佐和山先輩に聞いたら、ここに戻ってるって教えて下さったので」
「そっか」

 さなぎには忘れ物を取りに行くと言ってあった。
 正直に言うと、もう少しだけ舞台の余韻に浸りたかった――それだけなんだけど。


「僕、先輩の事が好きです」
 
 潤君が思い切ったように言葉を発した――けど、私の脳はそれを瞬時に理解する事なんて出来なかった。

「先輩は綺麗で優しくて、それでいてやっぱり凄くて……」

 私の沈黙をどう受け止めているのかは分からない――けれど潤君は告白を続けている。