小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

私のやんごとなき王子様 波江編

INDEX|51ページ/62ページ|

次のページ前のページ
 

11日目


「ふー。終わったね〜」

 大量の荷物を抱えた私とさなぎは、フェリー乗り場へと向かっていた。
 合宿も無事に終わり、今からまた船に乗り込み学園へと帰るのだ。
 とはいっても学園へ帰った後、今日はすぐさま解散。各自、合宿で溜まった疲れを癒す意味も込めて、自宅へと帰宅する事になっている。

 明日は本番一日前。明後日はいよいよ本番だ。確かにこの辺で一度、体を休めないとキツイかも。


 上手く日程組まれてるなぁ、なんて感心しながら私は船に乗り込んだ。
 甲板から宿舎を振り返る。
 この1週間、長いようで短かった。

「小日向先輩」
「――潤君」

 最後尾の甲板で段々と遠のいて行く島を見ていた私に、潤君が声を掛けてくれた。
 こんな風にたくさん潤君と触れ合う事になるだなんて、10日前まで思いもしなかった。そして、
 こんなに好きになるなんて事も――

「とうとう合宿も終わりですね」
「うん」

 隣りで私と同じように手すりに手を掛け、しばらく無言だった潤君がぼそりと言った。

「昨日の事なんですけど……」

 昨日の事と言われて私は一瞬身構えた。水原さんの言葉が頭の中でリプレイする――『先輩、私には時間がありますから。私、諦めませんから』。あの時のあの水原さんの燃えるような瞳を思い出して、思わず潤君から顔を反らした。

「……水原、何か失礼な事とか言いませんでしたか?」
「え?」

 一瞬たじろいでしまったが、それでもなんとか私は言葉を続けた。

「ううん、何も――有難う」
「そう――ですか……」

 私の言葉を聞くと、潤君は遠い海の方へと視線を馳せた。

「少し気になっていたので……。それなら良かったです。とにかく今日は帰ったらゆっくり休んで下さい! 明日で練習は最後ですし、僕……先輩のオディールを楽しみにしてますから!」

 そう言って笑った潤君の笑顔はどこまでも優しかった。
 ああ、この笑顔に私は惹かれたんだな――なんて再認識する。