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私のやんごとなき王子様 波江編

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「……そういう所が嫌いなんですよ、先輩の」

 俯いた私に水原さんの容赦ない言葉が降り注ぐ。

「…………」

 何も言えなかった。それ以上、何も――

「……失礼しますね、先輩」
「あっ……」

 踵を返しかけた水原さんが私の呻きに、もう一度だけ足を止めた。

「……先輩、私には時間がありますから。私、諦めませんから」

 そう言い残すと、今度こそ水原さんは宿舎の方へと消えて行った。

 水原さんの言葉の一つ一つが深く胸に突き刺さる。

 その場から動けなくなった私は、一人林道で佇んでいると辺りの静けさや暗さに急速に恐怖心が襲ってきた。
 いつの間にやら花火も終わってしまっている。


「小日向先輩!」

 不安に思わず泣きそうになったその瞬間、耳慣れた声が鼓膜を支配した。

「潤……君」

 振り向くとこちらに向って走ってきている潤君が見えた。
 
 ……追いかけてきてくれたんだ。

「大丈夫ですか? この辺りは暗いですから」
「うん。ごめん」
「部屋まで送ります」

 潤君はあんな事を言った私に向って、相変わらずの優しい言葉と笑顔を向けてくれる。
 私は自分が余りにも情けなくなって、その日はもう潤君の目を見る事が出来なかった。