私のやんごとなき王子様 波江編
「うん。だってさっき別れ際、波江君――笑ってたけどすごく心配そうだった。波江君は、本当に美羽の事を思ってくれてるんだなって、波江君と美羽が同じ担当で良かったって。私なんか少し安心したくらいなんだから!」
「さなぎ……」
「美羽と風名君や亜里沙様や波江君が違う事なんてないよ。ていうか、そりゃ違うんだけど、でもそうじゃないっていうか――あー、もうっ! 私ってば何言ってんの!? 自分でもワケ分んなくなってきた〜〜!」
大げさに髪を振り乱して叫ぶさなぎを見て、私は思わずくすくすと笑ってしまう。
「そうそう! 美羽は笑ってんのが一番だよっ」
さなぎはそう言って本当に優しく微笑んでくれた。
「ありがと……さなぎ。いつもゴメン」
「なーに言ってんの! なにかあったらいつでもさなぎお姉さまに相談なさい!」
そう言って自分の胸を大きく叩くさなぎ。そんなさなぎと私はお互いに顔を見合せると、同時に噴き出した。
ほがらかな笑が部屋いっぱいに響き渡る。
「美羽、本当にさ――思いつめたらダメだかんね? 担当は違うけど、何かあったらいつでも私のトコに来なよ? 約束だよ?」
「うん」
私は笑顔で頷いた。
作品名:私のやんごとなき王子様 波江編 作家名:有馬音文