私のやんごとなき王子様 波江編
5日目
理事長所有の島に到着した私達は、慌ただしい初日をなんとか終了した。
そして翌日――――
朝食を食べたら、すぐに担当毎の仕事が待ってる。
もちろん私は演劇の練習。発声練習でもしていた方がいいのかな? なんて思っていると、同室のさなぎが元気に声をかけてきた。
「おっはよー! 着替え終わった? じゃあ早速食堂へゴー!」
お腹が空いてるのね、さなぎ……。
「さなぎ、朝食は8時から、まだあと30分もあるじゃない」
「いーのいーの! だってもう私……お腹が空いて死にそうなのーっ」
そういうとさなぎのお腹が元気にグゥと返事をした。
「しょうがないなぁ、じゃあ少し早いけど……向かうだけ向かう?」
「うんうん! そーしよ!」
なんて言いながら、実は私もお腹が減ってるんだけどね。お菓子とかも持ってきてはいるんだけど、舞台に立つからちょっとダイエットしてたり? 最後の悪足掻きっていうやつかな。
食堂に向って廊下を歩いていると、前から下級生達が歩いて来るのが見えた。
「ん、あそこにいるのって」
「あ、潤君だ」
前方の下級生達の中心にいたのは潤君。同級生の男の子たちと何やら楽しそうに談笑している。ふふっ、なんだか見ているだけで本当に微笑ましい気持ちになってくるな。
「あ、小日向先輩!」
そんな事を思いながら見ていると、潤君はこっちに気づいてくれて、大きく手を振ってくれた。
「おはよー!」
私も手を振り返しながら挨拶をする。
「おー、可愛いねぇ、やっぱ」
私の横でさなぎもニコニコと笑っていた。うん、朝から潤君の笑顔が見れて俄然元気になってきちゃった。
朝食を食べ終わったらミーティング、そして練習だ。
私は昨日の夜に覚えた演劇の台本の1ページ目を頭の中でめくりながら食堂の中へと歩みを進めた。
作品名:私のやんごとなき王子様 波江編 作家名:有馬音文