私のやんごとなき王子様 風名編
アイドルの風名玲がお前みたいな一高校生の相手を本気でする訳ない、とバカにされてるみたいだ。
チラリと横に立つ風名君を見上げると、すごく悔しそうに地面を睨んでいた。
「それじゃあ行くぞ。玲」
「分かった……小日向ーーー」
さっさと行ってしまったマネージャーさんを追いかける前に、風名君は私の目の前で頭を下げた。
「ごめんな、嫌な思いさせちゃって……でも、俺はアイドルじゃない、一高校生の風名玲として小日向と接したいんだ」
「風名君……」
「だから、これからも変わらず話してくれよな……明日からの合宿、よろしくな。それと、今日の7時から生放送の音楽番組に出るから、良かったら見て」
顔を上げた風名君は少し寂しそうに笑ってそう言うと、手を振って去って行った。
私もアイドルじゃない風名君と、もっと仲良くなりたいよ。
合宿の間にもっと仲良くなれるかな? 明日からの合宿がすごく楽しみだ。
私は風名君の優しい笑顔の残像を心に焼き付けるように大きく深呼吸をして、ゆっくりと歩き出した。
作品名:私のやんごとなき王子様 風名編 作家名:有馬音文