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私のやんごとなき王子様 風名編

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「そうだけどさ……俺はオデット役は小日向に投票したのに」
「えっ!?」

 今、風名君何て言った? 私をオデット役に投票した? 何で?
 驚いて動かなくなった私に風名君が微笑みかける。
 本当にこんなに近くで風名君の顔が見れるなんて、幸せだな。ファンの子からしたら羨ましい限りだろうなあ。
何だか訳がわからなくなって変な事を考え出してる。

「俺は……」
「玲!!」
「わっ!?」

 びっくりした。
 風名君が何か言いかけた所で突然大声が頭上から振って来て、私は思わずびくりと体をすぼめてしまった。

「あ、マネージャー……」

 振り向くとそこにはスーツをぴしっと着た男性が怒りをあらわに立っていた。

「お前は、今日の収録の時間、忘れてるんじゃないだろうな?」
「忘れてないよ!」
「じゃあどうして俺に黙って女の子と二人で出かけてるんだ!?」
「演劇祭に必要な物を買いに行くのに、俺一人じゃ心もとなかったから彼女に無理言ってついて来てもらったんだ」
「バカか! お前はアイドルの風名玲なんだぞ! 少しは自分の立場をわきまえろ! しかも何回も電話したのに出もしないで!!」

 血管が切れるんじゃないかってくらいにこめかみに大きな青筋を立てて怒るマネージャーさんに、私は立ち上がって頭を下げた。

「すみません、私がもっと配慮して一人で行けば良かったんです! 風名君を許してあげてください!」
「小日向は悪くない! 俺が悪いんだから謝る必要ないよ! 俺が買い物について来てくれって頼んだんだから」
「あーもういいっ、やかましい! GPSのおかげでここが分かったからいいようなものの、以後気をつけるように。それと、キミ」
「はい!」

 急に指をさされて背筋を伸ばす。

「玲はアイドルでしかもまだ高校生だ。こんな所で熱愛だのなんだのとマスコミに騒がれたらイメージダウンになる。女性ファンが激減してしまうからね。そこの所をしっかりと理解しておいてもらいたい」
「――分かってます」

 熱愛だとか関係ないもん。だって風名君とはそういうんじゃないから。
 分かってる。
 分かってるけど、こうやって知らない人に頭ごなしに言われると、すっごく辛い。