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私のやんごとなき王子様 風名編

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 すう〜、はあ〜……すう〜、はあ〜……
 
 ―――だ、駄目だ。何度深呼吸しても、頭の中で客席に座ってるのは大きなカボチャだと思い込もうとしても緊張が取れない。心臓が爆発しそうだ。
 私は本番直前の舞台袖から覗いた客席の盛況ぶりに、極度の緊張に達していた。今にも口から心臓が飛び出しそうで恐ろしい。

 ドドドドド……!

 と猛烈な勢いで全身に血液を送り出す心臓に、軽い酸欠状態だった。

「うう……見なきゃ良かった……」

 後悔先に立たず。幕が上がるまで大人しく廊下でストレッチでもしていればよかったと、フラフラする体を壁で支えてぼやく。

「小日向、大丈夫か?」
「あ……」

 振り向くと廊下からこちらへ風名君が入って来る所だった。心配そうに私の傍まで来ると、ふと額に手を当てる。

「緊張し過ぎだよ」
「だって」

 緊張するよ! だってあんなに大勢のお客さんの前で、オディールという大事な役を演じなきゃいけないんだよ!? 失敗しないように、皆の足を引っ張らないようにってそればっかり考えちゃって、余計に怖くなったんだもん!
 なんて言いたくても口も上手く動かない。