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私のやんごとなき王子様 風名編

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 なんとか目的の物、っていっても私が適当に見繕って買ったから風名君のお気に召すかは分からないけど、手に入れた本とDVDを抱えて風名君の待つ公園へと急いだ。
 町中の公園にしては緑が多くて静かなその公園に入ると、すぐに風名君が私を見つけてくれた。

「ごめん、小日向に迷惑かけちゃったな」
「ううん、私は平気」
「はい、これ」
「ありがとう」

 風名君はジュースを買ってくれていて、近くのベンチに二人で腰掛けることにした。
 本を渡すと、中を見てすごく喜んでくれた。

「うわ、サンキュ。小日向について来てもらってホントに良かった。俺一人じゃ買えなかったよ」
「ううん。でも風名君いつもあんな感じなの?」

 さっきの人だかりを思い出してちょっとうんざりしながら尋ねると、風名君は苦笑した。

「まあ、そうかも……でもいつもはマネージャーとかSPさんが一緒だからあそこまで囲まれる事は滅多にないかな」
「そうなんだ」

 アイドルって大変なんだなあ。良かった、一般人で。
 ゴクリとジュースを飲むと、風名君が急に笑った。

「さっきの小日向の演技、びっくりした」
「えっ? ああ、あれ……風名君が困ってたから助けなきゃって思って、でもどうしていいか分かんなくて。今日の休み時間にもらった劇の台本の台詞がふと浮かんで、何でか分からないけど無意識に出ちゃってーーーう、わあ……今更だけどすっごい恥ずかしいっ!」

 もう、今日は風名君に声かけられてこけたり、人前で大根演技したり、私って本当に恥ずかしい!
 わっと顔を伏せると、風名君が急に真面目な声になる。

「すごく感情がこもってて、良かったよ。上手だった。周りの人たちも黙って聞き入ってたじゃん」
「あれって聞き入ってたんじゃなくて、びっくりしてただけだよ」
「そんなことないよ! 俺は感動したんだから!」

 顔を上げると、すごく真剣な顔の風名君が目の前にいて、私は胸が痛くなった。

「俺、やっぱりオデット役は小日向にやってほしい」
「そ、そんなの無理だよ。私には出来ないし、今日配役決まったじゃない。私はオデットのお友達の白鳥役なんだもん」