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私のやんごとなき王子様 風名編

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 午後からは気持ちを入れ替える事に成功したおかげで、何とか演出からも駄目出しをされずにスムーズに演じる事が出来た。

 ちょっぴり切ないのは最後にオデットとの愛を確かめ合って波間に消えて行く風名君の演技を見る事だ。……まあ、劇だから仕方ないんだけどね。



 もう部屋にはほとんど人が残っていない時間になり、私は荷物を持って部屋を出ようと歩き出した。

「小日向」

 ふいに名前を呼ばれ、私は振り返る。
 ドキ……
 風名君が額の汗をタオルで拭いながらこちらへやって来た。

「ちょっと時間、いい?」
「え?」

 戸惑う私に、風名君が窓の外を指差した。

「ちょっと気分転換に行かないか?」
「あ……うん。別にいいけど……」

 思わず頷いてしまったけど、風名君の顔をまともに見られ無い。練習の時は平気だったのに、終わった途端駄目だなんておかしい。
 風名君は、昨日告白されている所を私が聞いていたなんて思いもしないんだろうな。相変わらず爽やかに笑っている。

 胸が痛い。

「じゃあさ、汗かいたし風呂入ってから1階のロビーに集合な」
「分かった」

 集合っていうことは、他にも誰か誘うのかな?
 取りあえず少しほっとして、私は微妙な笑顔で風名君と別れて部屋へ戻った。