私のやんごとなき王子様 風名編
6日目
快晴快晴!
今日も朝から真っ青な空と海をどこまでも広げる景色を見つけて、大きく息を吸い込んだ。
昨日はまた落ち込んじゃったけど、さなぎのおかげで元気が出たし、何より風名君が朝から心配して部屋まで迎えに来てくれたのだ。
さなぎの言う通り、風名君は皆と普通に接したいんだなあって感じる。学校でも外でも風名君はやっぱりアイドルで、気のおける友人っていうのがきっと少ないのだろう。利根君はアイドルじゃない風名君と接しているのは見てて分かるし、私はって聞かれたら、やっぱりアイドルじゃない、クラスメートの風名君として近くにいたいしもっと仲良くなりたいって思う。
まあ、アイドルである事実は変わらないしカッコいいことも変わらないからどうしてもドキドキしちゃうんだけど。
「違う違う! もう一度やり直し!」
午前中の稽古にも皆気合いが入っていて、演出担当者の怒声が響き渡る。
今日からは台本は持たず、場面毎に区切りながら役者の動きや立ち位置の細かい指示が入って来る。明後日からは照明担当や音響担当の人達も加わって、さらに細かくなっていく。
日々緊張が増す中、演劇を監督している先生から昼前に提案があった。
「午後から夕方まで、海でリフレッシュしたらどう?」
という、素敵な提案!
これから本格的に練習に力が入って行くから、皆どこかしらピリピリとした緊張感がずっとあったんだけど、それをほぐすという目的みたい。
もちろんその提案にほとんど全員が大喜びで賛成した。
亜里沙様の取り巻き達が、アイドルである亜里沙様は日焼けなど出来ないから海には行かない。とか、少しは亜里沙様の事も配慮して欲しいとか文句を言っていたけど、当の亜里沙様は気にしていないようで、
「気分転換は必要です。私は残りますけど、皆様は存分に楽しんで来て下さい」
と相変わらずの涼やかな仕草と声で言ったから取り巻き達も顔を見合わせて渋々頷いた。
昼食の後、少し食休みを取ってから私達演劇担当は亜里沙様とその取り巻き数人を除く全員で海に来ていた。
作品名:私のやんごとなき王子様 風名編 作家名:有馬音文