私のやんごとなき王子様 風名編
「ええっっっ!?」
素っ頓狂な私の声が響いたのは午後の練習も終わりに近づいた頃だった。
私が驚いた原因は、今目の前にずらりと並んだ大人の集団。
見た瞬間、『取材』だと分かるその人達の風体に、練習中だった部屋の雰囲気が一転した。
ゾロゾロと入って来た大人達は遠慮なくシャッターを切り始めた。と、そこまでは良かったのだけど、次の瞬間一番手前に立っていた一人の女性が、私を手招きした。
「なんでしょう?」
誰かを呼んでくれ、とでも言われると思っていた私は、何気なく近づいた。
と、
「質問したいんですけど、いいですか?」
「ええっっっ!?」
で、振り出しの素っ頓狂に戻る訳だけど……。どうして私が取材を受けないといけないの!?
って思ったけど、他の皆はそれぞれ練習中で、今の所出番の無い私が一番近くにいたからなんだろうけど。でも無理だよ!
私が困惑していてもお構い無し、勝手に取材がスタートしてしまった。
「今回の演目を白鳥の湖にしたのは何か理由があるんですか?」
「風名玲君と桜亜里沙さんという今芸能界でも注目の二人が主役をやるというのは、やはり最初から決まってたんですか?」
「星越学園には芸能活動をしている人が多いですが、この劇の出演者も全員そう言った関係の仕事をしている人たちでしょうか?」
「与えられた期間が一週間しかないのに毎年大成功を納めているのは、学生ではなくプロが裏方をやっているという話を聞きましたが、本当でしょうか? もし本当なら学園は嘘を吐いていることになりますよね?」
同時に何人もの質問が飛んで来て、私は軽くパニックに陥ってしまった。
どうしよう、これって正直に答えないといけないのよね? っていうか、プロが裏方って何? 演目が白鳥の湖なのは何でって……
「……うう、あの、その……」
大勢の大人に囲まれてただでさえ緊張しているのに、カメラを向けられレコーダーを差し出され、フラッシュで目がくらんで何が何だか分からなくなって来た。
「すす、すみません、一つずつ質問して頂いていいですか?」
作品名:私のやんごとなき王子様 風名編 作家名:有馬音文