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私のやんごとなき王子様 風名編

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 そう言って手を振りながら、林の中へと走り去った。
 私は、風名君に触れられた方の頬を手で押さえ、走り出した自分の心臓の音を聞きながらしばらく動けなかった。
 大きな手。男の子の手だった。
 走って体温が上がっているからか、ちょっと熱くて、触れた場所が溶けそうだ。

「……もう、心臓に悪いよ―――」

 風名君みたいなアイドルに笑いかけられただけでもドキドキするのに、すぐ隣りで声を聞いてからかわれて……。
 なんだかちょっと、優越感?


「美羽ーー!」

 頭上から降って来た声に驚いて顔を上げると、さなぎが部屋の窓から身を乗り出していた。

「危ないよ、さなぎ!」
「へーきへーき! そろそろ朝食だから、戻って来なよ〜……って、ところであんた、そんな所で何してるの?」
「え? あ、散歩!」
「ふうん。じゃあ早く戻って来てご飯食べに食堂行こう〜」
「うーん!」

 朝食が済んだらミーティング、そして練習だ。
 私は昨日の夜に覚えた演劇の台本の1ページ目を頭の中でめくりながら歩き出した。

 まだ風名君に触れられた目の下は熱いような気がした。


*****