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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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青髭の塔

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青髭の塔で、お待ちしています、貴方。
私は、青髭の幼妻。
お待ちしてます、貴方。ここは、世界の果てにある絶望的に高い塔。私は、悪辣非道な青髭によって無理やり塔に閉じ込められています。口さがない人々が言う行方不明の前妻たちの噂と、青髭の恐ろしい容姿が、私を恐怖にのどん底に陥れさせます。いかにして、こんな男に輿入れしなければならなかったかと言うと、それだけでこのお話が終わってしまうので、ばっさりと割愛させて戴きます。お待ちしています、貴方。麗しき、私の王子様。颯爽と白馬に乗って現れ、囚われの私を救ってくれる日を。
あの日、あの時、街角で初めて目を交わした時、貴方の目は私への愛と歓喜を語り、無言で私を青髭の手から救ってくれると約束してくれましたね。私が両手で持っていた小洒落た手鞄から落とした、ポッキーの箱を優しく拾ってくれた貴方。そのとき、貴方が私を愛していること、そして私が貴方を愛していることがすぐに解りました。秘すれば花とは言うけれど、あのまま私を腕づくでも攫ってくれたら良かったのにといまでも思います。なぜ、あの時、貴方は私の事を攫っては下さらなかったのでしょう。
でも私は信じています、貴方が私をこの塔から救い出してくれることを。貴方が白馬に乗って青髭の手から私を奪いにきてくれる事を。そして、私たちは物語の最後のように、いつまでも、いつまでも幸せに暮らすのです。
貴方が来てくれると考えるだけで、天使がファンファーレを鳴らします。いつか来る日のために、いつでも貴方と暮らす用意はできてます。

私は、平凡を絵に描いたような男である。自慢することではないが、他人より秀でたところは皆無と言って良い。私は容姿にしても何をするにしても、全て平均程度なのである。その私が最近、何かがおかしいと感じる。毎日、誰かに後をつけられているような気がする。どうしてだろう。
ある時は、出勤時に。ある時は、昼食時に。ある時は、黄昏時に。誰かに舐めるかのように、執拗に見られていることを感じる。しかし、非常に残念ながら何度も振り向いてもそこには誰もいず、どこの誰がそんな事をしているのか一向に解らないのである。見当もつかない。
だいたい、誰が何故、どうして、至極平凡を絵に描いたような私なんかの後をつけるのか、謎である。

お待ちしてます、貴方。