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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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 爆発が収まると、山口は真っ先に起き上がり、テレビ塔のほうを見る。
「……帝国連邦空軍の研究者たちも、なかなかいい兵器をつくるな……!」
山口は埃を払いながらそう満足そうに言った。この攻撃をしたのが何であるのかを知っているようだ。
「すげぇー破壊力だ……」
山口の近くで起き上がった兵士もテレビ塔のほうを見て言った。

 テレビ塔をよじ登っていた悪魔はこっぱみじんにバラバラにぶっ飛んでいた……。鉄塔に悪魔の緑色の血が飛び散ったり、臓物がぶら下がっていたりするだけであった……。テレビ塔自体にも展望層の窓ガラスが割れたり鋭い軽い被害が出ていたが、頂上にある大事なアンテナは無事のようだ。

 その光景を山口は、ケータイの写メで記念撮影していた……。
「ちょっと山口さん!!! 何が起こったの?」
大須たちは、車から降りて山口の元に駆け寄って来ていた。
「……ちょうど戻ってきたみたいだぞ」
山口がそう言い終わった瞬間、また先ほどと同じジェット音が聞こえてきた。そして、すぐ頭上を一機の戦闘機が通り過ぎて行った。
「あの戦闘機は?」
真上を見ながら大須は聞いた。
「上社が乗っている戦闘機だよ。さっきの通信で彼を呼んだんだ」
「上社の奴、操縦なんてできたんですか?」
守山は舌打ちして言った。
「……ちがうよ。あの戦闘機は、コンピューターが操縦している無人機だよ。多分、上社は操縦席に座っているだけだろう」
「それならいいですけど……。それより、さっきの攻撃はなんですか? 戦術核兵器でもないのに、あんな爆発を見たことないですよ?」
「対悪魔用に開発された魔力ミサイルだよ。高価だが、コスパが良い兵器だ」
「どんどん新兵器が開発されますね」
「……そりゃあ、戦時だからな。研究者どもに、はっぱをかけてるんだってさ」

   ポンッ!!!

 その時、何かが飛び出すような音がした。また爆発が起きるのかと、兵士たちは一目散に近くの茂みなどに隠れ、山口たちも身構えた。……だが、次に聞こえてきた悲鳴に彼ら全員が安堵した。
「こ…こんなところで捨てないで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
……その悲鳴は上社のものだった。
 彼は、緊急脱出装置で無人戦闘機から空に、操縦席のシートごと勢いよく放り投げられたようだった。すぐにパラシュートが開き、彼を乗せたシートは、下にゆっくりと降下し始めた。
「た、高いところはイヤだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
高所恐怖症らしい上社はまだ叫んでいた。
「今年最後のヒーローは、なっくん(上社鳴海のニックネーム)ね!」
大須が、悲鳴をあげる上社を眺めながら微笑んで言った。
「ただのいいとこどりですよ!」
守山が、頬を膨らませながら悔しそうに言った。