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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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第1章 来客



   第2話『大晦日の群像劇』

【時間軸】 … 異次元暦42734年 12月31日 朝8時
【場所】 … 758号世界 首都 中京都(旧愛知県)
       『758号異次元空港(旧中部国際空港)』



 適当に整備されているアスファルトの滑走路に、1つの飛行物体がゆっくりと垂直に着陸していく。
 その飛行物体は、小型機ぐらいの大きさだったが、普通の飛行機とは見た目が異なっている。エンジンの噴出口の向きは回転させることができ、今は下へ向いている。これで垂直降下ができるというわけだ。
 武装は皆無で、丸いガラス窓がたくさんついている。窓の向こう側には、旅行者姿やスーツ姿の民間人が見える。
 その飛行物体の正体は、この758号世界と近隣世界とを結ぶ連絡船であった。異次元空間を行き来できる民間船というわけだ。

 滑走路に着陸した連絡船は、エンジンをすぐにオフにし、その場は次第に静かになっていく。海から届く潮風の音が、代わりによく聞こえる。

 少しすると、大型観光バスと軍用トラックとトヨタの『プリウス』で構成された3台の車列がやって来た。青色のプリウスや軍用トラックのボデイには、『中京都軍』という文字が踊っている。車列は、連絡船のすぐそばに停車する。
 すぐに軍用トラックから、ルーマニア製のAK74を構えた兵士たちが降りてきた。ただし、戦闘態勢ではなく、兵士たちから殺意は感じられなかった。プリウスからも、将校と兵士が降りてくる。
 右手にファイルを持っている小柄な将校は、いわゆる可愛らしい外見をしていた……。小さめの軍服(冬服)がよく似合っている。
 その将校は上社だった……。上社は兵士たちとともに、連絡船に近づいていく。そして、連絡船の近くで立ち止まった。
 すると、連絡船の乗降口のドアが開き、中からタラップが静かに地面へ降りていく。そして、タラップが地面に着いた瞬間、

「わ〜い!!!」ヽ(゚∀゚)ノ

 突然、滑走路どころか空港中に響きわたるほどの甲高い声がした。すると、連絡船の中から小さな子供たちが飛び出してきて、一気にタラップを駆け降りた。その後ろから、子供たちの親たちが旅行カバンを持ちながらついてきていた。
「コラ! おとなしくしていなさい!」
母親の一人が言う。すぐに子供たちのほとんどがおとなしくなったが、おそらくその母親の子供と思われる男の子は、上社の周りを走り回っていた。

   ゴチン!!!

 あたり一面に、げんこつの音が響きわたった。げんこつの音が鳴り止んだかと思うと、男の子の頭には立派なたんこぶができあがっており、即座に上社の前から母親によって連れていかれた。上社たちは、ただ笑ってその一部始終を眺めていた。どこか懐かしく感じている様子だった。そして上社は、笑いながらファイルを広げ、右手にボールペンを持った。
「……それでは、まずパスポートを確認します!!!」
すぐに上社の前に行列ができた。これから、この758号世界への入界審査(既に入界自体はしているが。)などが行なわれるのだ。
「……はい、大丈夫です。この紙に滞在中の注意事項が書かれていますので、よく読んでください」
上社は、手際良くスムーズに手続きをこなしていった。観光客たちが持っていた魔法の杖や護身用の武器といった持ち込み不可の物は預かけられ、軍用トラックに詰め込まれていった。あらかじめ、魔法の杖や武器などは預けなければいけないということは知られていたので、たいして混乱は起きなかった。