欲龍と籠手 下
クオレは突然泣き出したエルコットに戸惑った。
「クオレ!ごめんな。ごめんな。俺、どうしてもお前に母さんを会わせてやりたかったんだ。だけど、だけど!もうお前の母さんはどこにもいなかったんだ。何もしてやれなくて、本当にごめんな。」
エルコットは下唇を噛みながら泣いていた。
「エルコット…。」
クオレはしゃがみこむとエルコットを抱きしめて、背中をさすった。
「もういいの。もういいのよ。私、本当はね。母さんが死んでることを知っていたの。」
「なんだって?!」
エルコットは鼻水を手のこうでぬぐいながら、クオレの言葉に驚いた。
「じゃあ、なんで…今まで黙ってたんだ…」
エルコットは上ずった声で聞き返した。
クオレは少し戸惑ったように言った。
「だって言ったら、一緒にいる理由がなくなっちゃうじゃない。」
ぽかんとした顔のエルコットの顔を見て、クオレは朗らかに笑っていた。
~Fin~