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生きてるって素ン晴らしい!

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 アパート二階の部屋は、奥に六畳、玄関に二畳の板の間と小さな台所がある。昔は襖で仕切られていたが、今は外してしまった。押入れは一間、風呂は後付のユニットである。クーラーはない。先月壊れたきり、買い換えていないのだ。藤宮のいない昼間も影山がいるせいで、電気代の請求額が半端ないことになっているせいでもある。台所の窓と座敷の窓を開ければそれなりに風が通るので、夜ならあまり困らない。
 扇風機の強い風を浴びる藤宮に、影山は手を差し出した。指の長い、男の割に細い手だ。
「……なに?」
「なにじゃねぇ、ジャンプだよ! 今週土曜に出るから買ってこいってわざわざ朝起きて言っただろうが! お前何のために学校行ってんだ」
 タバコの煙を扇風機に吐き出して、影山は声を荒げた。藤宮は正面からそれを浴びて、むせる。
「それどころじゃないよ。俺、もう死ぬかもしれないんだ!」
「あぁ? どうせ、また大学で心ない女子大生にキモがられて死にたいとかそんなんだろ」
「違うよ!、今日は女子と話してねーし」
 それもそれで寂しい話である。自分で言った言葉と影山の哀れみの目に、藤宮はますます凹んだ。
「いや、そうじゃなくてさ……」
 気を取り直そうと、藤宮は流行遅れの眼鏡をTシャツの裾で拭く。感心しない癖だが、影山は黙っている。
「そこの通りで、辻占いがいるじゃん」
「あぁ、あのいい感じに寂れた商店街な。いるな、いかにも辛気くさそうな胡散臭いおばはん」
 身も蓋もない言い方だが、藤宮もその通りだと思う。
「いっつも俺のことガン見してるからさ、目合わさないようにしてたんだけど」
「お前にホレてんだろ」
「やめろ! ただでさえなんかいっつも俺のこと見てて怖いんだよ! でもそれはいいんだよ! なのに今日! さっき……」
 藤宮はうつむいて、言いよどんだ。
「告られたか?」
「ち・が・う!」
 珍しく窓から一迅の風が吹き込み、藤宮の顔を拭っていった。それで、彼は重い口を開いた。
「あ、ありのままのことを話すぜ……」
 今日のキャンパスも憂鬱の連続だったという話から始まるが割愛。そんなブルーな気持ちで駅から最短でアパートに戻ろうと、人通りの少ない商店街を通過していたその時。よく見る辻占いのおばさんに腕を掴まれた。
『あなた、今夜死にますよ』