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私のやんごとなき王子様

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 そして放課後。


 昼休みに考えすぎて胃が痛くなった私は保健室で胃薬をもらい、なんとか最後まで授業を受けることが出来た。
 教室で荷物を鞄に詰める私の頭の中は、猛烈な嵐が駆け回っている。それはもう散々たる有様で全然考えがまとまらない。

「美羽、明日までに決められそう?」
「……それが、全然」

 なかなか席を立とうとしない私を心配して声を掛けてきたさなぎに、半分泣きそうな顔で答え
る。
「正直に先生に決められませんって言って、相談したら? 真壁先生ならきっと真剣に考えてくれるよ」

 明るいさなぎの言葉に、私は活路を見出した気がした。
 確かに真壁先生なら親身になってくれるだろう。

「うん、そうだね……私、先生に相談してみる」
「そうしなよ! 私、図書室で待ってるからさ」
「ありがとう、さなぎ!」

 私はさなぎに見送られ、急いで職員室へと向かった。


 職員室には他の先生方も何名かいて、私の顔を見てはちょっとうんざりしたようなため息を吐いた。
 締め切りぎりぎりまで希望を出さない生徒なんてまずいないから、私の所為で仕事が停滞してるのかもしれない。
 激しく申し訳ないとは思うけど、やっぱり自分で納得した仕事がやりたいのが人情ってものでしょ?
 ぐいっと気合を入れると、真壁先生の横に立って声をかけた。

「先生、お話があります!」
「おう、小日向か。どうした?」

 真壁先生は小テストの採点の手を止め、隣の空いている椅子を引っ張って私に勧めた。
 それに小さく失礼しますと言ってから座る。
 私と膝を突き合わせるようにして笑顔を向ける先生に、私は肩を落とした。

「先生、私、どこを担当したいか全然決められなくって……」
「そうか。何か理由があるのか?」
「――あの、その……今年の演劇祭は私達3年生にとって最後の特別な大きな行事じゃないですか。だから、どこでもいいって妥協したくないんです」
「なるほどな」

 私の薄っぺらい信念に納得してくれた先生は、頷いてまた私の頭をくしゃりと撫でた。

「取りあえず明日が締め切りなんだ、なんとかして明日までには決めようぜ?」