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私のやんごとなき王子様

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 さなぎに励まされて気合を入れたにもかかわらず、やっぱり翌日になってもどこを担当したいか決められなかった私は、朝のHRで真壁先生に怒られた。

 怒るといっても本気で怒られた訳ではなくて呆れ半分だったのだけど、明日の締め切りまでにはしっかりと決めるようにと念を押され、気付けば昼休み。
 ああ、私は一体この4時間何をしてたんだろう……って、真面目に授業を受けてたのよ。
 うん、真面目に――

 キリキリ――――

「う……」
「どうしたの、美羽?」

 急にうめいた私に、さなぎが心配そうな顔でこちらを向いた。
 お弁当を食べ終えて教室でさなぎと一緒に5限目の英語の課題の曖昧な所を見せ合っていた私は、突然の腹痛でお腹を押さえて机に覆い被さった。
 どうやら悩みすぎてお腹にきたみたい。
 こんなに決められ無いだなんて、本当に情けない。
 ……あ、なんだかどんどん胃が痛くなってきた。

「お腹痛いんなら保健室行く?」
「うん、ちょっと胃薬もらってくる」
「美羽だけだもんね、演劇祭の担当決めてないの。ストレスもたまるよ……一人で行ける?」
「大丈夫、一人で行ける。ここの英訳よろしくね」

 ふらりと立ち上がった私は自分も立ち上がろうとするさなぎを制して、一人保健室へと向かった。



 私は保健室の前で佇んでいた。
 何故かというと、うちの学園の保健医の鬼頭先生がちょっと苦手だからだ。
 真壁先生まではないけどスラリと背が高くて白衣が良く似合ってて、眼鏡が似合うと女子生徒に評判の先生なのだが、ちょっと意地悪というか、わざと人を怒らせるような事を言ったりするのだ。

 そこがまたクールでカッコいい。って女の子の間では人気なのだとさなぎに聞いたけど、私としてはそんな風に思えない。だって優しくされたほうがいいもん。

 廊下の前で思案する事3分。
 ただ立ってるだけじゃ何の解決にもならない。おまけに鬼頭先生の事まで考え出したおかげで余計に胃の痛みが増してしまった。
 これはもう苦手だとか言ってる場合じゃないと、意を決してノックした。