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私のやんごとなき王子様

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2日目


 「おい、小日向。ちょっと」

 朝のHRが終わってすぐ、私は担任の真壁先生に呼ばれた。
 小さく返事をして席を立ち、出席簿で肩を叩きながら教室の外に出て行った先生の後を追う。
 何を言われるかは分かってる。

「お前演劇祭の担当、まだ決めてないだろ? 明日が締め切りだって分かってんのか?」

 やっぱりね。

「すみません」
「まあ、ごちゃごちゃ言っても仕方ないからな。取りあえず最終通告だぞ、明日の放課後までには決めろよ」

 呆れたようにため息混じりに言うと、先生は小さく笑った。

「はい、すみません」

 私が頭を下げるのを見届けて、先生は大きな手で私の頭をガシガシとなでる、というかくしゃくしゃにかき回して去って行った。
 私のクラスの担任の真壁先生は国語教師なんだけど、すごく背が高くて体格がいいから体育教師と間違われる。元気で明るくていつもニコニコ笑ってて、気さくで話しかけやすい先生だ。

 年齢もそんなに離れていないし独身だから、女子生徒にも意外と人気。
 一番先生の人気に拍車をかけるのは体育祭の時。毎年貧血で倒れる生徒を女の子だろうが男の子だろうが軽々とお姫様抱っこして保健室に連れて行く。という力持ちアピールのおかげで、女子にはいざとなったら体を張って助けてくれそう、男子には頼れる兄貴として人気なのだ。

 そんな兄貴な先生の背中を見送って、私は教室に戻った。

「先生なんて?」

 席に戻ると私の前の席に座って雑誌を読んでいたさなぎが尋ねてくる。

「ん、明日の放課後までに何をするか決めろって」

 私のくしゃくしゃになった髪の毛を整えてくれるさなぎから雑誌を横取りしそう言うと、さなぎは笑う。

「ふふっ、分かってたけど聞いてみただけー。で、結局どうするの?」
「う〜ん……どうしよう?」
「私と同じとこにしとく?」
「そうだねえ……」

 確かにさなぎと同じ担当なら気兼ねしないで済むし、楽しいだろう。
 でもやっぱり自分でやりたいと思う手伝いがしたいのだ。
 ――そのやりたい手伝いが決められないんだからどうしようもないんだけど。
 パラパラと雑誌をめくりながら昨日の出来事を思い出す。