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イン・ザ・クローゼット

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四.


 「シャルロット、ルイーゼ、――あらあら、アレットまで! どこで寝てるのかしら、あなたたち。こまった子ね、まったく」
 アレットはぱちぱちとまばたきをして、はふ、と小さくあくびをした。
「……おはようございます、ママン」
 そう言ったのはいいものの、どうしてママンがここにいるのかしら、それに、そもそもここはクローゼットの中なのかしら、外なのかしら、とアレットが首をかしげると、ママンは目の前でこわい顔をしてみせた。
「さあ質問よ、お姉ちゃん! あなたは一体どこにいると思う?」
 まだ寝ぼけた頭で、アレットはぐるりと自分の周りをながめてみた。
 色とりどりの服が床で山になっている。アレットはその上に寝転んでいて、寝ている内に寒くなったのか、身体の上にもこの間買った白いコートだとか気に入ってよく着ているピンク色のセーターだとかが乗っかっていた。同じ山の中にはシャルロットとルイーゼも、やっぱり服に埋もれて眠っていた。
 わたし、どうしちゃったのかしら。アレットはまた首をかしげた。シャルロットとルイーゼに引っ張られて太陽に飛び込んだ時に、勢いがつきすぎてクローゼットの中に突っ込んでしまったのかもしれない。そうだとしたら、このめちゃめちゃな服の山も納得できるわ、とアレットは思った。
 どっちみち、クローゼットを荒らしてしまったことに変わりはない。アレットはしゅんと首をすくめて、ごめんなさい、とママンにあやまった。うれしいことに、ママンはため息をついて、今度からはクローゼットで遊んじゃダメよ、としか言わなかった(もちろん片付けはアレットたちがやることに決まったけれど、そのくらいはしょうがない)。
 ママンが部屋からいなくなると、アレットはため息をついた。クローゼットから落ちちゃったことがばれなくて、良かったわ。
 それからアレットは妹たちを起こさないように起き上がって、服の山からカバンに入った大きな本を引っ張り出した。窓を開けて深呼吸をすると、冷たい空気が身体の中に突き刺さるようだった。今日もいい天気みたいだわ。アレットは少しだけ笑いながら、本の表紙を開けた。すると本のページたちは、ウサギ耳の本と同じように真っ白な鳥や蝶になって、太陽の方へ飛んでいった。ひらひらと出遅れた何羽、あるいは何匹かがその辺りを飛んでいるのをながめながら、アレットはポケットをさぐってみたけれど、やっぱり写真は見つからなかった(そう、いくらさがしたって見つかるわけはない。だってウサギ耳があれを持って行ってしまったのだから!)。
「名前くらい、教えてくれたってよかったわ。そう思わない?」
 ぼんやりつぶやいた時、ママンが下からご飯ができたわよとアレットを呼んだ。アレットははぁーいと大きな返事をして窓を閉めると、妹たちを起こしに、クローゼットの中に入って行った。
作品名:イン・ザ・クローゼット 作家名:みらい