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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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雪のチルル

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 こうして、チルルはろくさんの願いをかなえるため、あちこち飛び回って、花の苗を集めてきたのです。ろくさんはお酒をきっぱりやめ、庭造りに取りかかりました。
 庭ができた頃、チルルは北に帰って行きました。
 
 春です。ろくさんの家の門に、しゃれた看板がかかりました。
『どなたでもご自由に花をご覧下さい』
 町の人たちは、遠慮がちに入ってみました。
 つるばらの門をくぐると、チューリップ、クロッカス、三色すみれが、色とりどりのじゅうたんになって、迎え入れてくれました。
 真っ白なオオデマリやピンクのライラック、鮮やかな黄色の山吹は、虹のように重なって、花のトンネルを作っています。
「まるで、夢の花園みたい」
 町の人たちが感激していると、家の中から立派な老紳士が現れました。
「みなさん、ようこそ」
 みんなはますます驚いて、眼をしばたたかせています。
 『ろくでなしのろくさん』はもういません。
 この家の主は、気の利いた会話でみんなを楽しませ、とびきりおいしいお茶をごちそうしてくれる、上品な老紳士のろくさんです。
 花が咲き乱れるすてきな庭は、今日も笑い声にあふれています。
 

作品名:雪のチルル 作家名:せき あゆみ