いお夜話
彼は独りきりで流れを上り、藻を食んで岩を越えた。水は冷たく澄み、時々獣や鳥が他の、もっと小さな種の魚を獲ってはさざなみを起こしたが、彼は岩陰や絡んだ藻の影に身をひそめる技に長けていたので、生き延びることはたやすかった。
だが自分はなんのために生きるのだろう? きょうだいたちは対の相手を見つけたが、彼は孕むものでもなく、孕ませるものでもなかった。彼は種としては出来損ないであり、そうした類の本能の薄い個体だった。
それでも彼は河を上り続けたが、ある時河の神が現れてこう言った。
「お前を人の姿にしてやろう」
だが自分はなんのために生きるのだろう? きょうだいたちは対の相手を見つけたが、彼は孕むものでもなく、孕ませるものでもなかった。彼は種としては出来損ないであり、そうした類の本能の薄い個体だった。
それでも彼は河を上り続けたが、ある時河の神が現れてこう言った。
「お前を人の姿にしてやろう」