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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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インビンシブル<Invincible.#1-2(2)>

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短いセンサーの類と、最終的にはカメラ越しの映像を見る
パイロットの肉眼が頼りになる。
 「フェディック、仕掛けろ。びびらせてやれ」
『アイサー。針に糸を通すぐらい、きめ細かく、際どく狙ってやりますよ』
 ダリア3、フェディック・オーレル中尉の操るガル・メイスが、
ビームライフルを構え、狙撃体勢を取った。
 ダリア3のビームライフルから、一本の光軸が放たれた。
と同時に、ライオン・ハート<ダリア1>と、ダリア2は
敵機を迎撃するため、フェディック機を後に残し、
全速力で目標へと向かい駆け出していった。

             *****           

 距離6000から熱源反応。同時に、ロックオンアラート。
K・ジャッカルの脇を、一条の光の線が横切った。
敵ARのビームライフルによる、長遠距離射撃だとわかった。
 ARが扱うビームライフルは、イオンを収束した
荷電粒子を放つものであり、大気中では大きく減衰するため、
数十キロを超える超長距離射撃には向かないが、
AAの一般交戦距離圏内ではAAのエーテルプレートを中和し、
装甲を貫通するには充分な威力を有している。
 亜光速で飛来するビームは、肉眼で知覚してからでは
避けることが間に合うようなものではない。
当らなかったと言うことは、ただ運がよかっただけか、
それとも敵機のFCSが誤差を矯正しきれていなかったからだろうか。

 いいや---(命拾いをしたか?いや、誘っているなこれは)
弾道は予め反れるように仕向けられていたとヴァルバスは感じた。
わざわざ、センサー有効距離圏内ギリギリの所から自ら仕掛けるとは、
お世辞にも利口とはいえない。
当ればそれに越したことはないが、仕損じれば自分の位置と
存在を相手に明かす行為に他ならないからだ。
 こういうことをリスクもおそれず、打算抜きにやるということは、
こちらを挑発しているということか。
よほど自分たちの腕に自信があると見える。
 こちらの目的はライオン・ハートの動きを抑え込むことも含まれている。
あちらか手招きしているのならば、これはこれで都合がいい。

 (だが…よくもまぁ…)
『”アジなマネを”って感じよねぇー』
ヴァルバスの頭に一瞬よぎったセリフを、ミュートスが口にしていた。
こいつとは、こういうところで妙に考えが似通う所がある。
『見つかってるんだから、仕掛けてもいいのでしょう?』
「ああ、やるぞ。スバリエ隊、交戦<エンゲージ>。
<スバリエ2、3>は、敵の連携を押さえ込め」
『了解!』
(女の声に押されてというのが尻に敷かれている証拠か。
我ながら格好の悪いことだ)
 ミュートスに後を押される形となった自らの処遇の悪さを苦々しく思い、
ヴァルバスは体裁を取り繕う意味でも先陣を切って見せた。
 対物センサーに敵機の反応。
先行して接近してくる機影が2つ。
後方にさらに1つ。
たった1小隊でこちらの相手をしようとは見上げたものだ。

 K・キマイラの背中にマウントされた
ウィングパックのバインダーが開いた。
バインダーの中から、三角錐を細長くしたような、
全長8mになる錐状の物体が計6本放たれた。
 射出された”三角錐”はその場で三回ほど宙で回転すると、
進行方向を定めてARの巡航速度を上回るスピードでかっ飛んでいった。
 この三角錐こと、
RAMS(Reflection semi-Autonomy control Mobile device System)は、
小型ジェネレーターを組み込んだリフレクション・ホイールと荷電粒子砲が
内臓された半自律機動兵装システムである。
 RAMSは量子無線通信で機体のFCSとオンラインリンクし、
情報をリアルタイムで更新、修正し射撃管制を行う。
くわえてセンサーで、大気中のリフレクションスノーの分布状況と
周囲の情景と状態を読み取り、その情報は電気信号化され、
パイロットの脳内視覚野に送信される。
パイロットは、その送信されたイメージ情報を通して
RAMSの遠隔コントロールを行うのである。
 使うのに鋭く繊細な感覚と、厳密な空間把握能力を必要とするRAMSは、
使える人間が限られている兵装であり、ミュートスはそうしたイメージを
感じる力に長けている能力の持ち主だと言えた。

 ヴァルバスは、敵機の姿を目の当たりにした。
距離、4500。モニターのレティクルがターゲットを補足した。
確認できる機影は、三つ。
他に敵影は無し。
 スロットル最大。機体の速度がぐんと跳ね上がる。
全身がリフレクションホイールといっても過言ではないK・ジャッカルは、
機体速度を超音速域に持っていくのに5秒と掛からない。
すぐさま最大航空速度を発揮し、轟音とともに空を駆けていった。

            ****              

 優れたパイロットが操れば、たった数機の戦力で限定的な
局地戦局を戦術レベルでがらりと変えることができるのが
AAという兵器である。
 エーテルプレートで物理攻撃を緩和し、機体に纏った
リフレクションスノーでレーダーから身を隠すことができるAAは
艦船や迎撃システム等が主力としているミサイルなどの誘導兵器から
一方的に攻撃されることがない。
 AAは、その特性を生かし、超音速で標的に接近し、
近接戦闘において圧倒的な機動力で、既存兵器群に
対してイニシアチブを握っている。
 誘導兵器を寄せ付けず、自らの得意間合いである近距離で従来の
機動兵器群に対し優位に立てるAAは、局地戦において既存の
兵器システムを駆逐する兵器としては、効率的かつ優秀であり、
無類の強さを誇った。
 AAが登場して以来、既存の兵器群は優位性を失い、
次々と戦場から姿を消していった。
 局地戦で専ら活躍する主力兵器はAAがその割合を占めるようになり、
世界のミリタリーバランスは均衡化が図られていった。
 12年前に地球からのエーテル工学技術が導入されてからは、
AA至上主義の構造は更に磐石なものになったと言える。
このヒエラルキー構造は、AAを容易に打破する兵器が
登場するまで覆ることはないだろう。

 AAに対抗しうるのはAAのみ。ならば、それを打ち破るのはAAの役目。
その点において、ラック・キスキンスがAAを破壊するスペシャリストとして、
最も優秀な人材であることは彼自身の実績が物語っていた。
もちろん、操る機体がそれ相応の性能をもっているというのも理由の一つだ。
 そういうことならば単純に加算の要領で、
ライオン・ハートの機体性能を100と指数化するならば、
150の性能を持つ機体に彼以上の技量をもつか、または拮抗している
パイロットをぶつけてやれば、勝てると言う算段になる。
 その点で言えば、ヴァルバス・アルミドルが乗る
K・ジャッカルは150の性能を持つ機体で、
マシンパワーにおいて、ライオン・ハートに大きく勝る性能を有していた。
 USV空軍でトップクラスのパイロットと評される男、ヴァルバス・アルミドル。
彼こそ、ラック・キスキンスと拮抗しうると世界から評されるエースであった。
そうしたパイロットが強力な機体を扱い、