小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ひとつの恋のカタチ

INDEX|3ページ/30ページ|

次のページ前のページ
 

「……俺、頭も悪いし、背もそんなに高くないし、叶えられるとしたら眼鏡掛けてるところくらいしか、おまえの理想には合ってないと思う。でも、気持ちは本気だ!」
 必死の顔で訴える山下に、いつの間に集まって来た生徒たちが、賞賛とからかいの拍手を浴びせる。そんな拍手にもろともせず、山下は佳代子を見つめていた。
「返事は? 中島。へーんーじ! へーんーじ!」
 教室から顔を出しながら、男子たちが囃し立てる。
「うるせえな! どっか行けよ!」
 野次馬たちに、真っ赤になった山下が、本気で怒鳴り立てる。
 そんな山下を見て、佳代子も山下を見つめた。
「な、なんで、こんな目立つ所で……」
 やっと、佳代子がそう言った。
「だっておまえ、さっさと帰りそうだったから……」
 山下の言葉に、佳代子が苦笑する。そしてもう一度、佳代子は山下を見つめた。
「……本当に? なんで私なんか……」
「理由なんかないよ。もちろん、バツゲームなんかじゃない。気付いたら、好きになってたんだ。気になって……意識してた。おまえの理想論聞いて、面白いやつだなって思ったし、なんか意識し過ぎてしゃべりづらくもなっちゃうし……あ、言っておくけど、自分から告白したの、おまえが初めてだからな」
 そんな山下の告白に、佳代子はこれ以上ないというほど、真っ赤になった。
「佳代子。答えてあげなよ」
 黙ったままの佳代子に、少し後ろで聞いていた奈美が、そう言った。
「わ、私なんかでよかったら……」
 やっとのことで、佳代子はそう言った。山下も嬉しそうに微笑む。
「こちらこそ。よろしくお願いします!」
「おめでとう!」
 山下の言葉に、その場に居た全員が大きな拍手をして、大盛り上がりを見せた。

「理想とはちょっと離れちゃったけど、王子様はいたんだなあ」
 それから数日後、にんまりとした佳代子がそう言った。
「ハイハイ。それで? その王子様は、今どうしてんの?」
 話を聞いていた、奈美が尋ねる。
「進路相談室。なんか成績ヤバくて、進級危ないみたい……」
「あはは。とんだ王子様ね」
「うん。でも、幸せだからいいんだ」
「ずいぶん変わったなあ……」
 二人は笑った。
「じゃあ私、部活行くね。佳代子は山下待ってるんでしょ?」
「うん」
「じゃあね」
「うん。また明日」
 佳代子を残して、奈美は教室を後にした。
「お待たせ」
 しばらくして、進路相談室から山下が戻ってきた。
「どうだった?」
 佳代子が尋ねる。
「んー、今度の中間がヤマ。遅刻ももう出来ねえし」
「げっ。じゃあ、勉強しなくちゃ」
「教えてくれる?」
「もちろん」
「じゃあとりあえず、勉強は放課後デートの後ってことで……」
「違うよ。勉強デートでしょ」
「そうだな」
 二人はそのまま、学校を後にした。

 理想と現実は、必ずしも合わないこともある。むしろそっちのほうが多いのかもしれない。
 だけど、それでも幸せを感じられたなら、そこが私の居場所。その人が、私の理想……。
 はがゆくて甘酸っぱい、ひとつの恋のカタチ。