少女機械人形コーパス 第一幕
<コーパス廊下SE走音>
同日
コーパス 第268区画
左文字
「ハァッハァッハァッ!」
第三療養所 12号室
ウィィィン
<SE扉開閉音 背景療養所>
左文字
「よう子!!」
土方
「左文字参謀長……」
左文字
「土方参謀! これは一体……っ!」
土方
「……アルカ装置排出の際の事故との報告です」
左文字
「事故……? 外傷は全くないのにか?」
土方
「ヴィロネカートからの何らかのウィルスに侵された可能性は捨てられない……と野柳博士は」
巳上
「? だぁれ?」
左文字
「っ?!」
<スチル記憶の無い巳上>
土方
「――残念ながら、記憶の喪失が認められています。少なくとも『楔の悪魔』襲来以降の記憶は完全に喪失しているものと……。それ以前の記憶状態は現段階では定かではありません」
左文字
「な……ん……」
巳上
「?」
土方
「精神レベルも10年前と同レベルと診断され、今の巳上主任は8歳児の状態と同様です」
左文字
「……っ」
巳上
「お兄さんはどうしてそんな悲しいお顔をしているの?」
左文字
「よう……子……」
巳上
「? どうして? どうして私の名前を知ってるの?」
左文字
「俺……は……」
巳上
「!」
巳上
「健二くん……? あ……健二くんだぁ〜」
左文字
「っ?! よう……子……?」
巳上
「そうだよね? 健二くんだよね? うわぁ〜。なんで健二くん大人になっちゃったの? うわぁ〜。カッコイイねっ!」
左文字
「よう子……?」
土方
「殆どの記憶は失われ、ご自分の両親の事も記憶には無いようですが、唯一その男性の記憶だけは残っているようで」
左文字
「健二の……」
土方
「診断では『楔の悪魔』の襲来以降の10年間、唯一毎日のように思い続けた人物なのではないかと」
左文字
「そうか……よう子は……健二を……」
左文字
「ははっ……」
巳上
「? 健二くんじゃないの……?」
左文字
「……っ!」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文



