少女機械人形コーパス 第一幕
左文字
「……確かに俺はマヌスに逃げてすぐ、コーパスに入れて貰えたからな。そのおかげで大事な人間とも共に生きられた」
七々原
「地上での生活水準が高かったんでしょうね」
左文字
「……そうかもしれない」
七々原
「俺達は親が死んでも、何の遺産も無かったから。妹とCエリアで保護されただけでも有難いですよ。でも……。
でも――知ってますか左文字さん、Fエリアで働く女性は皆……Cエリア出身なんですよ」
左文字
「Fエリア……遊郭か」
七々原
「あのまま生きていれば、いずれ妹もそうなったかもしれない。保護されている身分の俺達が、国の決定に逆らう事なんて……不可能ですよ」
左文字
「……っ」
七々原
「……でも、俺はパイロットに選ばれた。俺が功績を残せば、妹の未来は保障される」
左文字
「……そうか」
七々原
「断る理由なんて、どこにも無いですよ。それどころか俺は今、喜びで踊りたい位ですよ! ハハッ」
左文字
「――七々原、俺はっ」
七々原
「あ! ここじゃないですかー?」
左文字
「っ。――ああ、シミュレーションルームに到着……だな」
七々原
「ここで、俺は――」
左文字
「七々原。俺が君に出来る事は、しっかりとした訓練を積ませる事だけだ。……すまない」
七々原
「なっ、何言ってるんですか?! 俺、そんな……全然……ホントに今、嬉しい気持ちだけですよ」
左文字
「……すまない」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文