少女機械人形コーパス 第一幕
12月3日
午後10時02分
コーパス総司令室
<背景・司令室>
池峰
「パイロットとコアの調整はどうだ」
野柳
「概ね順調です」
池峰
「……そうか」
野柳
「我々のしようとしている事が公になったら、コーパスは解体されますね、間違いなく」
池峰
「愚者には分からんよ。人類を救うにはデーケルターレしかないのだ。例えそれが、どんなに非人道的な行為であったとしてもな」
野柳
「はい」
池峰
「作戦を成功させれば良いだけだ。犠牲は少ない方がいい」
野柳
「意外ですね。コアに同情ですか?」
池峰
「くくっ。まさか。
犠牲が多くなればなる程、我らの危険も増える……という事だ。
もっとも愚者共がそれに気付く頃には、どうにもならないだろうがね」
野柳
「『楔の悪魔』を引き抜き、世界をヴィロネカートから救った組織コーパス。地上を支配するのは、余りにも容易でしょうね」
池峰
「その為にもアレには死力を尽くしてもらわねばな」
野柳
「パイロットジョエルの事ですか」
池峰
「無論だ」
野柳
「パイロットの安全性は絶対とは言えません」
池峰
「前例の無い事だ。当然だろう。予測は所詮、想定にすぎない」
野柳
「パイロットが何らかの毒気に感染する可能性も、否定出来ませんが」
池峰
「その場合は、感染が拡大しない事を第一に考えるのだな。隔離するなり処分するなり、好きにするといいだろう」
野柳
「……」
池峰
「ただ、アレの代わりとなるパイロットの選定がまだされていない。それまでは丁重に扱う事だな。アレは脆い」
野柳
「新しいパイロットはいつ……?」
池峰
「Cエリアから三人程候補が挙がっている。適正検査をクリアした者から使用許可していく」
野柳
「Cエリア……ヴィロネカート襲来による孤児達ですか」
池峰
「そうだ。あのエリアの者達ならば数人消えたとしても、さして問題になるような事もあるまい。
そもそもデーケルターレに受け入れられる者は年若いものばかりのようだしな」
野柳
「12歳〜18歳までの少年少女が対象のようです。
茅野博士の研究結果により、その情報をデーケルターレに組み込みましたから」
池峰
「天才・茅野修か。惜しい者を亡くしたな」
野柳
「……はい」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文