少女機械人形コーパス 第一幕
饗庭
「……」
野柳
「何か言いたい事でもあるのか」
饗庭
「姪だなんて」
野柳
「一番自然な関係だと思わないか」
饗庭
「……思わないわ」
野柳
「そうだろうか?」
饗庭
「私の気持ちを知ってるクセに。ヒドイ嘘」
野柳
「私の役に立ちたいと申し出たのは君の方だ」
饗庭
「そうよ。私はあなたの役に立ちたいわ。そして、傍にいたい。ずっと」
野柳
「ならば結構な事じゃないか。
私の望みは君がジョエルとの関係を友好的に保つ事だ。そして君は、初対面としては十分なお友達ぶりだったろう」
饗庭
「あんな子供の相手なんか、本当はしたくないのに」
野柳
「君だって子供さ」
饗庭
「子供じゃないわ!」
野柳
「……私の望みは君とジョエルの完全な信頼関係の形成だよ」
饗庭
「それを成し遂げたら、あなたは私に何をしてくれるの?」
野柳
「ふふっ。君の望むことなら何でも叶えよう」
饗庭
「嘘」
野柳
「本当だ」
饗庭
「……信じていいの?」
野柳
「おや。好きな男の言葉が信用出来ないのかな?」
饗庭
「……信じるわ。」
野柳
「……いい子だ」
饗庭
「ジョエルを完璧に信頼させてみせるから、覚悟しててよね!」
野柳
「期待しているよ」
<SE・電話音>
トゥルルルル トゥルルル
饗庭
「何よ、もうっ。どーせマネージャーだわ」
野柳
「さ、アイドルは帰った方がいい」
饗庭
「……。もうっ」
<SE電話受音>
ピッ
饗庭
「はい、くるみです。…えぇ。…うん。…分かったわ」
<SE・電話音ピッ>
饗庭
「行かなきゃいけないみたい」
野柳
「明日のライブ、楽しみにしているよ」
饗庭
「私がジョエルを夢中にさせるのを?」
野柳
「……手厳しいな。」
饗庭
「うふふ。あなたの為に頑張るわ、野柳博士。それじゃ、ホントにもう行かなくちゃ」
野柳
「ああ。今日は有難う」
饗庭
「その言葉だけで十分。それじゃ、失礼します」
<SE扉開閉音 饗庭消>
野柳
「……まるで子供のお守りだな」
<スチル・茅野修と野柳で写っている写真>
野柳
「実に下らないだろう? 茅野」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文