少女機械人形コーパス 第一幕
ウィィィン
<SE・扉開閉音>
饗庭
「失礼します」
野柳
「君は知っているかもしれないな。紹介したいというのは彼女だ」
ジョエル
「彼女……って、あの……アイドルの……」
饗庭
「饗庭くるみです。私を知っていてくれたみたいで嬉しいです!」
饗庭くるみ―Kurumi Aiba― 15歳。
この地底世界で人々に歌を届けている。
その人気は絶大で、まさにアイドルというに相応しい。
ジョエル
「あ……あのっ」
饗庭
「うふふっ。ジョエルくん、よろしくお願いします」
ジョエル
「こっ、こちらこそっ。よろしく……」
野柳
「彼女は私の姪なんだよ。
どうしてもパイロットに会いたいと言うからね。私も彼女の前では、ただの叔父という事さ」
ジョエル
「なんか……意外です」
饗庭
「あら、叔父様は私には本当に優しいんですのよ」
ジョエル
「なんか……ホッとしました。野柳博士はボクなんかとは住む世界が違うっていうか……別次元の人のように思えて……だから……」
野柳
「ジョエル君、私も君も同じ人間だよ。人類の夜明けを望む同じ人間だ」
ジョエル
「……はい」
野柳
「君みたいな年若い者がパイロットだなんて、心苦しく思うよ。しかし、私にデーケルターレは操れないからね」
ジョエル
「……はい」
野柳
「期待しているよ、ジョエル君」
ジョエル
「はいっ」
饗庭
「うふふ。お堅い話はオシマイ。ねぇジョエルくん、明日の私の中央ホールでのライブには来てくれる?」
ジョエル
「えっ……行きたいのは山々なんだけど……ボク、チケットが無いから……」
饗庭
「もう! 私とジョエルくんはもうお友達でしょ! チケットなんか必要ないわ! いつだって特別席にご招待よ!」
ジョエル
「え……でも……」
饗庭
「でもじゃないの! スタッフの皆には言っておくから、絶対に来て……ジョエルくんに見て欲しいの」
ジョエル
「あ……ありがとう」
饗庭
「うふふふ」
野柳
「さて、それじゃあそろそろジョエルはデーケルターレの調整に入る時間だ。ケージへ向かうといい。私も後で様子を見に行こう」
ジョエル
「はいっ」
饗庭
「じゃあ、明日ね」
ジョエル
「うん、また。では、野柳博士、失礼します」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文