少女機械人形コーパス 第一幕
巳上
「ホンットにバカなんだから」
ジョエル
「なんか、羨ましいです。お二人の関係が」
左文字
「おっ、わかってるねぇー、ジョエル」
巳上
「こんなバカに気を使わなくていいのよ、ジョエル」
ジョエル
「でもボクには、そんな軽口のきける友達もいないから」
巳上
「ジョエル……」
左文字
「じゃあ俺と友達になろーぜ、ジョエル。」
ジョエル
「え……でも……」
左文字
「こんな大人ばかりのコーパスなんていう組織に配属させられて、お前なりに悩む事もあると思う。だから、俺には何でも言えばいい」
巳上
「ふふっ。京介の方がジョエルより、よっぽど子供っぽいしね」
ジョエル
「くすくす」
左文字
「お前なぁー、俺ってそんなに子供っぽいかぁ?」
巳上
「子供っぽいわよ。……でも、自分に正直でとても優しい人」
左文字
「っ?! ね……熱でもあんのか? よう子?」
巳上
「ありませんっ」
ジョエル
「くすくす」
巳上
「ねぇ、ジョエル。あなたは覚えていないでしょうけど、ヴィロネカートが空から堕ちてきたその日から、地上はとてつもない混乱にみまわれたの」
ジョエル
「……ありとあらゆる生物が生きながらにして腐敗していったと聞いています」
巳上
「そう。私と京介は家がお隣同士で、私はよく京介の5歳下の弟の健二くんと遊んでたの。私、男勝りだったから、虫取りしたり木登りしたり……
すごく楽しかったな」
左文字
「あいつも喜んでたよ。よう子ちゃんよう子ちゃんって、しょっちゅう話してたぜ」
巳上
「ふふっ」
ジョエル
「虫取り……木登り……。本当にそんな風に遊べた時代があったんですね」
巳上
「そう、あったのよ。
でも、たった一体のヴィロネカートの襲来で、それもおしまい。
私の父も母も姉も、ボロボロと崩れ落ちるように死んでいったわ。京介のお父様もお母様も……健二くんも、同じように腐敗していった。
目の前で大切な人達が崩れていく……私は自分が正気を保っていられることに絶望したわ」
ジョエル
「………」
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文