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少女機械人形コーパス 第一幕

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序幕
 〜Quad nesciunt eos non interficiet.〜
( かれらが知らないものは、かれらを殺さない。)

 西暦2044年。

『それ』は突如として地球に飛来した。
 隕石でもなく人工衛星でもない『それ』の飛来に、人類は未曾有の混乱に包まれた。

 なぜなら『それ』は高層ビルより高く雲よりも白く、そして何より見た者全てが畏怖するような『ヒトのかたち』をしていた。

 巨大な『それ』にどう接するか、世界中で意見は割れた。
 政治家、軍人、学者、法王…
 保身とエゴに支配された人間達の意見が合う事は無く、ひたすらに責任転嫁を繰り返し、手をこまねいているだけの人類。

 時間だけが無常に流れる中『巨大なヒトのかたちをしたモノ』は、確実にその行動を開始した。

 ある自然保護区域の片隅に、その『巨大なヒトのかたちをしたモノ』は己が体躯を沈め始めた。
 ずぶずぶと地中にその身を沈め、その下半身のおよそ3分の2程が地中に埋まった頃…。

『巨大なヒトのかたちをしたモノ』は大きくその両腕を広げ、その活動を停止した。
 活動を停止したこの謎の巨大生命体に、人類は実に64種ものアプローチを敢行。

 しかし『巨大なヒトのかたちをしたモノ』に変化をきたす事は出来なかった。

 どんな攻撃にも揺るぐ事は無く、傷を負わせる事すら叶わず。
 またどんな力を持ってしても、深く大地に突き刺さったその体躯を引き抜くことは出来なかった。

 現存する兵器のありあとあらゆる攻撃では何の成果もあげられず、それ所か接触すら困難な人類を嘲笑うかのように、それは始まった。
『巨大なヒトのかたちをしたモノ』の飛来から13日が経過した時の事である。


 始まりは実に瑣末な事だった。
『それ』の傍に咲く今を盛りと咲き誇る一輪の花が突如として朽ち果てた。

 それに気を止めた人類など恐らくはいまい。
 しかし確実に、そして急速的に『それ』を中心として大地の腐敗が開始されたのだった。

 草は枯れ果て、花は朽ち、土が崩れた。
 樹齢300年を超える大木でさえ無残に倒れ、腐った大地へとその身を沈める。
 無論、毒に侵されたのは大地だけではない。

 川は荒れ、淀み、濁った。