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暗い世界のアンダーグラウンド

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ここはいわゆるアンダーグラウンドな世界、地理的な意味でもアンダーグラウンドな、地下遊戯場というやつだ。法律を蹴飛ばして運営している賭博場やら競売場やらがあって、その中でもおれは闘技場で働いている。ちなみに契約社員というやつだ。
だいぶ前にこの地下遊技場に迷い込んだんだか遊びに来たんだか、まぁそんな感じで、無差別級ボコり合い、カッコ良く言ったらアブソリュート級ボコり合いに参戦したわけなんだが、何の因果か日頃の行いか只単におれがクソ強かったのか、当時最強のファイターを負かしてしまい、今に至るまで勝ち続け、遂には闘技場の番人なぞと呼ばれるようになった。口調がまどろっこしい?うるせえ生まれつきだ。

 ここの生活はそこそこ気に入ってる。月並みな発言だが、食うものには困らないし、寝床も常に暖かい。社宅ってやつだな。心身共に万全の状態で挑戦者を叩きのめすため、ある程度のわがままもきいてもらえる。少しやっかいな事があるとすれば、多分もう外の世界には戻れないという事だろう。この裏世界に味を占めて、陽の当たる場所では満足して生きていけない、とかいう意味じゃなくて、ハードボイルドな映画とかでよくある『生かして帰すわけにはいかない』みたいな。
そこは、ねぇ。俺にとっちゃ、そもそもがここの生活気に入ってるし、わざわざ眩しすぎて目を細めなきゃ生きていけない外の世界へ出る気はないから、関係ないっちゃないんだけど。

 それにおれにはここに居続ける目的がある。
遊技場の支配人のことだ。
いや、もしか したら支配人じゃなくて、支配人(この場合は死臭くせぇひひじじい)の愛人とかかもしれないし、俺にしか見えない勝利の女神とかかもしれないし、悲鳴溢れる闘技場から離れられなくなったドSかもしれないけど、とにかくおれの雲の上にいるお方。
これがまたちょう美人。
陶器みたいに白い肌して、真紅の絹糸をくるくるっと上品に巻いてさ。10人の男とすれ違ったら10人とも振り向くってかんじの。まぁ、おれだったら振り向くだけで満足しないでそのまま腰とか掴んで抱き寄せちゃうけどね。
 とにかく恐ろしく美しい女(と書いてひとと読む)というのを伝えたい。その彼女が、闘技場の番人が代替わりした時だけ、闘技場に現れるというのだ。実際、おれが彼女を見たたった一度は、おれが前の番人をブッ倒した時だった。
 闘技場には、金を賭けてるオーディエンスにも、挑戦者にも、いくつかのコースがある。挑戦者は、初心者コース的なので経験値を積んで、番人に挑むわけだ。他にもちょろちょろこまごまとコースがあるんだけど、そっちには全く顔を出さず、本闘技場目玉と言って過言じゃない、血湧き肉躍るチャレンジコースで大きな変動が無い限り顔を出さないってことを考えて、あの赤毛のおひめさまは、闘技場の主だってまことしやかにささやかれているのだ。そして現・番人であるおれ的に、その仮説はずばりだと思う。

 おれに倒された前の他称番人も、彼女が見たくてじっと倒されるのを待ってたんじゃないかな。この虚空の下で。上を見上げても、そこに広がるのは作り物の空だ。あおいろのパネルに、擬似太陽。出力最大で熱と光を闘技場に届けるそれは、ここが地下だと忘れさせる。照りつける太陽に焼かれて、おれらの闘志も熱く燃え上がる。
 そして、おれがもう一度その姿を目に映すことができる唯一の機会といったら、おれが負けて死ぬときだ。


 不毛過ぎる。
正直、一目また会いたいだけで、おれは今日も明日も、おれを負かせてくれる誰かを待ち続けてこの舞台に上がるのだ。