【過去作】私の青空2 プーチンクエスト【2000年(16歳)】
復讐を果たし終えた椎本は、朦朧とする意識世界の中で自分の鼻血を拭うと、確かな足取りで死体安置所より幾分かは違って、そして明るい、外の世界に向かった。
CURTAIN CALL
12月24日
12月24日。東京新宿アルタ前。街は馬鹿の様に騒がしい。
長い事影の世界に生きてきた椎本貫之は、生まれて初めて、待ち合わせをしていた。
「待った?」「葵」「待って無いわよね。たったの8時間だものね」「ああ」
「・・・どうしたの?何か変よ」「悪い悪い」「ぼけっとしてる」「電光掲示板。あれ見てた」
椎本が指差した先には、巨大なビルディングの上に掲げられた、オーロラビジョンが大写しになっていた。
「・・・何がそんなに面白いの?」「大塚アナ、釈放されたんだってよ。セクハラじゃないって散々訴えてたのが認められたんだな」「ふうん」「ああ、それにしても西陣織先輩、何処に行ったのかしら。探す旅に出るなんて、言わなきゃ良かった」「まあまあ」「それに私は五十六さんが良かったの!何であんたが来るのよ」「五十六さんも色々忙しいって事さ」最も椎本は、五十六に嘆願してこの役回りを受けさせてもらったのだが。「それより、何の手がかりも無しに東京まで来ちまって、平気なのか」
「平気な訳ないでしょ!東京はぁ・・・その・・・私が来たかっただけ」「・・・」
その時だった。
サンコンが出ていたオーロラビジョンが、突然違う画面に切り替わった。そして、そのオーロラビジョンに映し出されたのは、何を隠そう遠山西陣織その人だった。
「西陣織!」「西陣織先輩!」二人が声を合わせて叫んだ。
「あー、あー・・・えー、いいですか、日本国民の皆さん、ちょっと公共の電波を拝借致します。コホン。えー・・・・・・。聞こえてるかああぁ!!!五十六!関屋!椎本!それからムガル先輩!今アタシはホンジュラスに居ます!と、言うものは、ここでにっくきプーチンを発見したからです!しかし!このプーチン野生化して中々手が付けられません!だから・・・
お前らああぁ!全員今すぐホンジュラスに来いっ!!そしてまた暴れようぜぇ!!あと」
プチンッ。
そこでようやく、テレビ局お決まりの『しばらくお待ち下さい』カラーバーが割り込んできた。
作品名:【過去作】私の青空2 プーチンクエスト【2000年(16歳)】 作家名:砂義出雲