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【過去作】私の青空2 プーチンクエスト【2000年(16歳)】

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そして、最も信頼する人の元に駆け付ける事が出来た瞬間
彼は、自分の網膜に映し出された光景を信じなかった。そう、過去に西陣織が拳銃を自分の蟀谷<こめかみ>に当てている姿など、想像画に書くことすら無かった。
そして、彼は、何故か眼前の愛しい人に二度と逢えなくなる様な気がして、只我武者羅にその想像を超えた世界の倫理を全て壊したい、そう一途に思い名前を叫んだ。「西陣織さん!!!」
「教えてやる。現状打破の一発だ」西陣織は自分の指に掛かった半月状の引金を強くしなやかに弾いた。轟音が轟く・・・。



二、椎本貫之 「嗚咽問答」

椎本貫之は、一つ二つばかり自分の身体に銃弾の撃ち込まれた事を真摯に受け止めた。熱い。痛みを通り越すと熱くなるのだろうか。
気味悪い程暖かな液体が腹部、その周辺に染みていく。
椎本は急に締め付けられるような嗚咽感に苛まれた。
居たたまれなく崩れ落ちると、間も無く強い酸味が喉元にこみ上げる。
胃液の排出行為は身体の疲労に合重なって更なる嗚咽を運ぶ。
嗚咽によって齎された悪臭が巡って再び嗚咽を運ぶ。
純粋嘔吐物の中に血液が混じっていた。それは卵黄の中の白身の様に床に沈むでも無く水面に浮かぶでも無く中立を守って存在する。
思えば昨晩から何も食べていない気がした。体力の消耗。
虚ろな意識世界の中で椎本は、場違いにも葵の事を考えていた。
俺が死体になって現れたらあいつは泣いてくれるだろうか。
急に、眠たくなってきた。眠りたい。眠りに付きたい。
-flash back-
今ここに葵の姿が、見えた気がしたのは俺の妄想か?
その俺の作り出した葵は間違いも無く俺の目前に来て、俺を起こしに来るはずだ。
・・・何故自分の幻想だと気付きながら<期待>している?お前の幻想だろう。
解っているはずだ。そんな幻想は絶対にお前の側に来て手を握る事など無いんだぞ。
痛くて仕方が無いのなら「眠れば楽になる」当たり前だ。幾ら俺でも解るよ。
永遠に快楽の世界だ。よっぽど良いかもな。こんな汚れた匂いの世界なんかより。
「それなら如何して只葵の事を考えてる?」
「あっちの世界が在るんじゃないのか?」
それは違うな。俺が考えてるのは葵の温もりだ。柔らかな手の温もり。