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【過去作】私の青空2 プーチンクエスト【2000年(16歳)】

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第三話「交渉 Negotiation」


9月5日午前4時5分
静岡県内で3人目の死体を発見

椎本貫之は、ディスプレイを強く叩き、何か破損は無かったかと後で考える。其れ程までに彼の目に鮮やかに飛び込んで来た報道は予期せぬ物であった。3人目の死体。そんな阿呆な。俺が手をかけたのは二人までだ。
始めは模造犯かと考えたが、プールの塩素で人を殺す事が出来るのは玉筋魚村出身の俺位なものだ。玉筋魚村の表土の3分の2は塩素から構成されている為、ガキの頃から俺達は塩素に関する全ての知識、味、やさしさ、致死量を誰に教わるでも無く知っていた。
(ちなみに玉筋魚の人間はほぼ全員の指紋が消え失せている)
待てよ。玉筋魚村出身の・・・?嫌な名前を不意に思い出した。もし、万が一あいつが絡んで来たとなれば只事で終わる筈が無い。腹を括った。こんな夜明けにアスピリンを飲み干し、頭痛に加え睡眠への葛藤と戦ってまで俺はあそこへ行かなければならない。
「エルガー!玉筋魚村まで遣ってくれないか。俺の勘が当たれば奴は少なくとも30分以内に次の動きを起こすはずだ。なるべく急いでくれ!」この国際テロ集団『ぼくはブルガリア人じゃないよ』の主要メンバーは現在6人。最も俺はこのヤマにだけ雇われた用心棒だが。
とにかく俺達を乗せたライトバンは夜明けの環七を通って静岡県は玉筋魚村に向かう。
雨が降り始めた。今回の帰郷が決して楽しい物では無いだろう事は容易に想像できる。
俺は鞄の中からリボルバーを取りだし、その重厚な弾倉に軽くキスをした。

同日午前4時34分
立てこもり事件発生1分後

「西陣織先輩!格好良かったですよ!」「いやあ、照れちゃうなぁ」
「で、でもこれからどうするんですか?警察来ちゃいますよ」「まず警察が来る前に全ての進入口を塞ぐんだ。小さな覗き穴一つ残らない様にな。もし私達がプーチンを縛っているこの状況を知られたら厄介な事になる。SATが突入してくるのはまだ後だ」「はい!解りました!五十六さん、やりましょう」「え?あ、ああ」嬉々として駆けて行く葵の後を五十六が追う。
「雨が強くなってきたな・・・」夜明けにも関わらず辺りは変わらぬ闇が取り囲んでいた。

同日午前8時13分
プーチンからの無線による第一次要求の10分前

雨はドリフのコントなみに降り続いている。