パクリ??
「・・・んじゃ、ちゃんと迷子にならないで教室まで行くんだぞ?分かったな?」
学校の校門前にて、俺と颯希は別れのあいさつを交わしていた。
「うん!サツキ、ちゃんと先生のいうことも聞くよ☆」
「いい子だな颯希は♪」
俺がポン、と颯希の肩をたたくと、颯希は一年生の昇降口の方へと消えていった。
※
さて、時は変わって入学式。いよいよ待ちに待った……
我が家のアイドル颯希ちゃんの入学式です☆
「ん、っと・・・ビデオビデオ・・・・・・」
生徒席で、俺は三脚にたてたビデオの位置を調整していた。だって颯希の晴れの舞台だ
から、完璧に撮らないといけないからな。
「よし・・・」
ビデオの液晶画面を開く。そこには、バッチリ舞台がうつっていた。
「完璧すぎる・・・」
思わず自己満足なため息がこぼれおちた。そして俺はゆっくりと髪をかきあげ、片手で
メガネを掛け直した。
その直後。
「おい夕月てめぇ何考えてるんだッ!」
ごつい男の怒声が飛んできた。
「・・・?」
嫌な予感がしたが、ゆっくり振り返る。
「誰が生徒席にカメラ持ってきていいなんて言った?」
そこには、入学式にもかかわらず赤いジャージに首に笛を掛けている、超熱血体育教師、熱岡(ねつおか)が周りの空気+3℃の空気をまとい立っていた。
「・・・・・・もしかして、先生は知らないんですか?」
俺は知らぬ間に、涙目になっていた。ここで、熱岡にビデオを取りあげられたら、颯希の晴れ舞台が取れなくなってしまう!何があっても、それだけは絶対に避けたい!!!!!!!!!!
「・・・何をだ?」
熱岡は、涙目の俺に首をかしげていた。
「俺の妹が、今日入学するんですっ!!それで、両親が入学式に来られないから俺が妹の
ことをカメラで撮っておけ、って頼まれてッ・・・!!
やっぱそれでもここで撮っちゃダメですか?」
「おお、今日はお前の妹さんの入学式か!おめでとう!!でもな、ここで撮っちゃだめだ。代わりに先生がお前の妹を最高に熱く撮って来てやる!さぁ、夕月、カメラを貸してくれっ!俺は今、熱いんだっ!さぁ、貨せ!!!」
・・・熱岡の剣幕はものすごかった。
「はい、じゃぁ撮ってきてください・・・お願いします・・・」
そして俺は、熱岡の迫力・・・ってかむさくるしさに負けて、彼にカメラを渡した。