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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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インビンシブル<Invincible.#1-1(2)>

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「これでよかろう。右肩部関節を捻挫、それと
鎖骨と肋骨に若干のヒビが入っておる。
慣性減衰システムの補助ありでも操縦はちと酷じゃな」
「どうもありがとう、おじさま。楽になりました」
「なんのお安い御用じゃよ」
応急処置を施され、着崩れたパイロットスーツを羽織りなおしながら、
リフォは怪我人とは思えないほど、ハキハキとした調子で応えた。
が、すぐにその快活な表情に陰が刺した。
気丈に振舞っていても、それをごまかせるような軽い怪我ではない。

 その表情の意味するところを察したギアが、一つの提案を示した。
「…レオ、お前、操縦してみるか?」
「え…?」
AAの操縦を薦められて、レオは困惑をちりばめた
表情を浮かべた。歯切れ悪く、言いたいことを言えず
口の中で言葉を反芻しているような仕草。
(レオ、迷っているのか…?
まだあの”事故”を克服できておらんということか)
ギアはレオのかかえている問題とAAに対するトラウマを
よく理解していた。
にも関わらず、今のは軽率な発言だったと自省した。

「すまん。言ってみただけじゃ、わかっておる」
「うん…いや、気にしないでよ、じいちゃん」
そういって、レオは誤魔化すような笑顔を無理につくって見せた。

 眠れる獅子が覚醒するには、まだその時ではないということか。
かつては、幼年学校時代において半世紀に一人の才媛と
言われたレオだったが。
卒業を間際にした実機訓練での事故を境目にして、
その才能に陰りが見え始めた。
 軍の適性試験には結局通らず、AAパイロットの適正なしと
判を押され幼年学校を卒業した。
それでも腐らずに、一年間勉強し、整備士としての適性を
見出され軍人になったのは、レオのAAに対する執念と思い入れの
強さ故によるものだろうと、ギアは思っていた。
そうした気持ちを持つレオが、パイロットの道を本気で
諦めたとは到底思えなかったのだ。

 執念の炎は、心のなかで燃えているはず。
なにか、切っ掛けさえあれば立ち直れるのではないかと、
ああ言って煽って見たが、結果は承知の通りだった。

「ところで嬢ちゃん、今ここで起こっている
状況を説明してくれんかな」
「はい、突然でした。音沙汰もなく、あの黒いAR達が
工廠を襲撃してきて。…見たこともない機体だった。
工廠の警備部隊が応戦に出たけど、敵の技量は
プロそのもの。PMC(民間軍事企業)の方達では、遠く及ばず。
私も、アルヴェードに乗って応戦したけどこの有様で…」
「敵の機体に見覚えはあるかの?」
「いいえ、全く。各国の軍が使っているどの機体にも
当てはまらないタイプでした」
「ふむぅ、見たことも無いARか。時勢的に、もしかすると」
「ルィアールの機体だってこと?」
レオが言った。

 「まぁ、推測の範囲は出ないがな。証拠があるわけでもなし」
「連中の狙いは、アルヴェードだと僕は思ったんだけど。
そうじゃなくて、工廠のデータか何かってことかな」
「多分、両方かも。だから、私はアルヴェードに乗ったんだもの。
実際に敵は、この機体を優先的に狙ってきたし。
目的の一つであることには違いはないかもしれない」
「だとしたら、ここに長居するのはまずいね。早く移動しよう」
「そうね。でも、…遅かったかも」
 レーダーに反応。敵機を表すシンボルが二つ、
こちらへと向かってきている。
気がつけば、レーザー発信で識別リンクしていたはずの
PMCのAR隊のシンボルが一つ残らず消えていた。
それが告げているのは、彼らが全滅したという事実だった。