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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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インビンシブル<Invincible.#1-1(1)>

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ジグは、レーダーに目を走らせた。
敵の反応がレーダーの隅へと移っていくのが見えた。
エイザス2に足止めされていたせいで、最後にとり残された
K・ウルフは、形勢不利と見て撤退したようだ。
敵ながら賢明な判断だ。

『MEC稼動限界時間枠、0秒。
MEC、シークエンス終了。
次回使用可能まで25秒の充填時間を要します』
ジグはリィオンのコックピットの中で、AIがMECの使用限界を
告げるアナウンスを聞いた。
次に耳に入ってきた言葉は、獲物を取られて腹に据えかねているジグの機嫌を
さらに損ねさせるには充分だった。

『さすがはラック中佐ですね。大したものですよ』
ジグのチームメンバー、コールサイン”エイザス2”、ライズ・ハンドリック曹長は
興奮した様子で妙技を繰り出した主を称えた。
 コノヤロウ、オレノチームメンバーノクセニ、ドウイウツモリダ。
と、リィオンのカメラ越しから、ジグは部下に呪いの視線をぶつけていた。
ジグが恨みと怒りの視線を向けていることなど露知らず、<エイザス2>の
メインカメラは颯爽と飛び去っていくそのARの姿を捉え続けていた。

 そこには仰々ししくも、存在感ある意匠のARが空を駆けていく姿があった。
流線型のフォルムにマッシブな躯体。
機体背部にマットされた
計4基のスタビライザーが特徴的な、白を基調とした赤と黒の
ツートンカラーのデザイン。
ヘルメット状の頭部には後ろに向かって、計6本の”角”が生え揃っており、
まるでその意匠はライオンのたてがみを連想させる。

 エアリアル皇国空軍にて”最強”と対をなす
”最高”の肩書きを持つエースの片割れ
ラック・キスキンスが操るAR。
”ST-DR60 Dread Lion(ドレッド・リィオン)こと
通称<ライオン・ハート>”。

 8年前、エアリアル皇国の軍産企業、”セイボリック重工”が開発し、
当時において最高峰のスペックを与えられ
汎用量産機開発データ採取用の試作機として世に送り出された機体だ。
いまや、エアリアル皇国空軍のトップエース、ラック・キスキンスと併せ、
軍を代表するAAの一つである。

 通信のコール音が耳に入ってきた。
1対1のプライベートチャンネルでの通信だった。
原則、作戦中でパイロット間での使用は禁止されているのだが。
(あの野郎め・・・)
コックピット内のビューモニターに、ホログラフィウィンドウがポップされ、
CGによって補正された画像が映し出された。

 通信の送り主は、やはりというか
”最高のエース様”ラック・キスキンスだった。
(小憎らしいやつだぜ全く)
お前の勤勉的な底意地の悪さには頭が下がる。
『こちらダリア1。悪いがなジグ。今週の撃墜王の座は俺がいただくぜ、
アリアのあっつぅ~いチューも俺が頂く。帰ったら、枕をくやし涙でぬらす
リハーサルでもしとくんだな”撃墜王”?』
ラックはからかうような口調で、ハグしてチューをするジェスチャーを
しながら高笑いをした。

 そう言われて黙ってはいられず、ジグは言い返してやった。
「”隊長殿”は、妻子持ちの癖にふしだらでいらっしゃる。
他の女に色気だしてると、奥さんに張り倒されるぞ?
それになラック、アリアは俺のフィアンセだ。そこを忘れるなよ」
『違う誤解しないでほしいね。そんな邪な気持ちじゃぁない』
…それはある意味、女性に対して失礼なのでは。

「じゃぁ、一体どういうつもりで?」
『ジグの悔しがる顔が見たい、それだけさ』
そう言って嫌らしくも爽やかにほくそ笑む、散切り頭。
「最悪だな、おまえは…」
『だいいち俺は、カミさん一筋だし、息子もいるし。
ほかの女性に手をだすなんて破廉恥なマネはしないよ。
こう見えてもご近所じゃ家族思いのアットホームパパって
評判なんだぜ?(キラッ)』
茶目っ気たっぷりに歯を輝かせてさわやかなスマイルを浮かべるラック様。
ぐっ、と親指を立てるのも忘れない。
「やれやれ・・・とんだ、アットホームパパだぜ」

 二人が話の引き合いに出した女性。
ノーチラスの戦闘管制オペレーター、アリア・ノーティア少尉。
しとやかで、大人の女性ながらもどこか幼さがのこる透き通った
水のような容貌を持つ彼女は、殆ど男ばかりのノーチラスにおいて、
男性クルー達の羨望を一心に集める皆のアイドル的存在であった。
毎週週末の夜にクルー達が艦の食堂で開く『表彰式』で、
その週で訓練を兼ねたシミュレーターでの”パイロット総当り
リーグ戦”での戦績、または実戦での撃墜スコアが併せてトップだった
者にはささやかな褒章が送られる。
その褒章が、今週はアリア・ノーティアにキスしてもらえる
(ただし、ほっぺ)権であった。

 男性陣はこれに色めきだち、無駄なやる気を見せていた。
が、このやる気を憎悪に変換させてしまう事実が発覚する。
なんと、ジグがアリアと付き合っているという事実が判明したのだ。
 それだけでは飽き足らず、なんと二人の関係はすでに婚約者という間柄に
まで発展していたというのだ。
(親御さんも承認済み)

 クルー達の預かり知らないところで、いつの間にかできていたらしい。
さすがはジグ・ギャッバマン。
御婦人を口説くテクニックにおいても、”撃墜王”だったというわけだ。
 その事実を知った男性パイロット達は
『俺たちのアイドルを独占するなんてとんでもない野郎だ』
とおおいに憤慨した。
それが元で、怒りと嫉妬心に火が点いた男性陣達は
我らがアイドルをたぶらかした(?)ジグをへこましてやろうと、
みながこぞって『飛ぶ鳥落とす勢い』もとい『飛ぶAA墜とす勢い』で
撃墜スコアを伸ばしていった。
 それを傍らで見ている女性陣達は『なにバカやってるんだか・・・』
と呆れ顔であった。

 この騒ぎにはAAチームリーダーのラック・キスキンスも面白がって
参加しており、その動機が
『悔しがったジグの泣きっ面を拝めて、んでもって
アリアのキスもゲットできて一石二鳥ッ!超愉快ッ!!』
という嫌がらせ同然の理由であり、実にいたずら好きを標榜する
ラックらしいものだった。

 肝心のスコアは現在、僅差でジグのほうがリードしていた。
だが、今日の戦闘でラックに巻き返される可能性が充分にありえた。
しかし、愛しのフィアンセのキスを奪われては一大事。
頬とはいえ他の男に、しかも憎たらしいラックにだけはやるわけにはいかない。

『だったら、営業マンのように必死こいて成績稼ぐんだなジグ。
愛しのアリアのキッスを俺に奪われたくなかったらな。
ちなみにあと5機でお前のスコアを更新だ。火が点いてるお前の
ケツを真っ黒焦げにしてやるから覚悟しとけよ』
「ほざけ。この腹黒アットホームパパめ」
『ダリア1、エイザス1。戦闘中に、プライベート通信は
原則禁止されている。自重しろ』
やはり、プライベートチャンネルを使っていたことが、
ノーチラスの戦闘管制官にばれていた。
『こりゃぁ、終わったあと始末書かな。お前も共犯だな、ジグ』
「へいへい、ソウデスネ」
ラックのお茶目な振る舞いに真面目に突っ込む気力も失せたジグであった。
 そんなやり取りをしつつ、二機のARはリフレクションウェーブの尾を描き、