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仁科 カンヂ
仁科 カンヂ
novelistID. 12248
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天上万華鏡 ~現世編~

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 相手を愛しているからこそ、地獄に堕ちて欲しくない。だが、そのために自分が犠牲になると、相手はそれ以上に傷ついてしまう……究極のパラドックスにはまりこんでしまった。
 解決法が見つからないまま、しばし沈黙が続いた。しかし、時間はあまり残っていない。天使たちによる包囲網は、確実に春江を追い込んでいる。見つかるのも時間の問題だった。
 そんな時、春江がその沈黙を破った。
「お父様は私の笑顔が全てだと言いましたよね?」
「はい」
「だったら問題ないですね」
 仁木はまた馬鹿な事を考えているのではないかと疑った。
「ベリー様が天使更迭される時に言われていたんですよ。正しいと思うことを、守らなくてはならないものを捨ててまで生きて、何の意味があるんですか? って……そして笑顔で墜ちていかれました。今ならベリー様のお気持ちが分かります」
 春江は、今いる防砂林から駆け抜け、浜辺の方へ移動した。そしてバイオリンを取り出し演奏を始めた。
「春江! 何をしているんです! 天使たちに見つかるではないですか!」
 仁木の制止を振り切り、春江は渾身の力をもって演奏を続けていた。曲目は「チゴイネルワイゼン」情熱的だが時に悲哀を漂わせる曲である。
 仁木は、演奏をやめさせようと春江のそばに近寄り、バイオリンを取り上げようとした。
「邪魔しないで!」
 春江が一喝すると、仁木の体は宙に舞い、弾かれた。春江の強い意志に圧されたのである。
「誰か……誰か春江を止めてくれ! 天使に見つからないように!」
 仁木の声を聞いた異形なるものたちが春江にふれようとするが、皆はじき飛ばされた。一種の結界を形成しているかのようだった。
 暫くすると、結界官が現れ、
「我が名はカン・ウイッヘン、3等結界官である。資源エネルギー局局長、ホルスの命により、汝を拘束す」
 と言った後、春江を拘束するための結界をはり始めた。
「あ……あ……」
 崩れ落ちる仁木。直後、ついにあの天使が降りてきた。保安官である。
「我が名はジョン・ベリン、三等保安官である。汝は転生管理法十三条、刑法二百三十五条「天使誘惑」及び、地脈管理規則百三十九条違反により、ジュネリング強制失効の令が発令された。神の名において汝を処分する」
 ついにこの時が訪れた。