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ふたりの言葉が届く距離

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 カーテンの隙間から漏れる淡い陽光に目を細め、意識をゆっくりと覚醒させていく。
 枕元に置いてある目覚まし時計を見て緩慢な動きで立ち上がり、薄暗い部屋の中を見渡す。
 作業机の上にある携帯だったモノ。それは、何が「現実」で、何が「夢」であったのかを物語っていた。

(新しい携帯を買わないといけないな)とボンヤリ考える。

 今度は、自分で機種を選ばなくてはならない。
 
 朝食は昼食も兼ねて外で食べればいい。 
 すぐに顔を洗い、身だしなみを整え、外出用の服に着替えて家を出た。


 商店街を歩いている様々な表情の人達を視界に入れながら、俯瞰から眺めれば自分もその集団の一員なのだと思う。
 俺の存在も、俺の想いも、決して特別なものではないのだろう。
 いや、それとも、この世界には ありふれた“特別”がひしめいているのか。

 初めて会った時から理奈は小説を書いていた。
 それは彼女にとって“生きている”と同義なのではないかとさえ思えた。
 理奈は自分らしく生きていく為に最適な場所を選び、最適なパートナーを選んだ。
 それだけなのかも知れない。

 俺に対する想いは変わってしまったのではなく、その役割を終えたのだろうか。

 いや、昨日の口論でそう結論づけるのは早計だ。
 彼女からはっきりと別れを告げられたわけじゃない。プロポーズを断られ、『藤宮さんは必要な人なの』と言われただけだ。

 しかし、俺は信じられなくなってしまっていた。
 理奈の心ではなく、自分の心が。