アリス
声の主は、あのウサギなのだろうか・・・
先ほどから、頭に響いてくる声の内容からしてウサギで間違いないと、私は確信していた・・・。
『もウ、こんな時間ダ・・・』
『遅れテしマウ・・・』
『急ガナきゃ・・・』
中庭を抜けてバラ園にたどり着くと、ようやくウサギは姿を現した・・・
「・・・えっ」
目を・・・疑った
バラ園の入り口に立っていたのは・・・綺麗な顔立ちの・・・・・
男の子
多分、私より年上のその男の子は
女の私でも見とれてしまうほど綺麗な顔立ちで・・
触らなくても分かるサラサラとした銀髪を肩まで伸ばしている・・
黒いカマーベストに白いワイシャツ、赤いネクタイ・・
手には大事そうに銀の懐中時計を握りしめている・・・
何か違うことといえば、スラっとしたウサギの耳が頭から生えていることぐらい・・・
男の子は、私に気づくとにこっと微笑んでバラ園の中へと走っていってしまった・・・
「待ってよ!!ウサギさん!!」
この時、正体が男の子と分かったのに『ウサギ』と呼んだ私は、まだ気づいていなかった・・・・・
あの
不思議でイカれた
魅力的な世界に呼ばれていることに・・・・・
『・・・ヲイデ』