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コッペリアの葬列

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プロローグ




 初めて小説を書いたのは、小学二年のときだ。小説と云っても、絵本が少し分厚くなった程度の童話のようなもので、内容は覚えていないがおそらくひどく稚拙なものだっただろうと思う。ただ、書いたものよりも、書く行為を覚えた、ということが私の中で重要な意味を持つ。
 私にとって、「書く」という行為は呼吸に等しい。私はあまり自分と同じように小説を書く人を知らないから、確証はないけれど、小説は少なからず自分を反映するものだと思う。それが経験である人もあれば、欲求であったり、自分の意思であったり、形は様々だろうけれど、だからこそ文章は十人十色なんだと思う。少なくとも、私はそうだ。
 最近になって、物語を脚色することを覚えたけれど、つい一昔までは自分の経験に忠実な小説を書いていた。どちらかといえば、面白いものを書きたいという欲求よりも、自分の身に降り掛かった出来事をきちんと咀嚼したいという気持ちの方が大きかったのかもしれない。
 勿論、今でもそういう節があるのは否めない。やはり物事は経験してみないとわからないことばかりだから、作家になりたいとぼんやり考えるようになってからは、ドラマティックな出来事を求めるようにして生きてきた。そうやって得たものを咀嚼していただけなのが少し前の自分で、それに色付けを覚え始めたのが最近の自分だと思う。
 作家を目指し始めた物心のついた頃から、「経験が命」と自分に云い聞かせて、私は生きてきた。なるべく多くの仕事や人種に出会うために、十以上のバイトをしてきたし、ゲストハウスに長期滞在したり、一人で呑み屋を渡り歩いたりして、常に「ネタ」を探して彷徨っている。
 このエッセイは、そうした自分を一度顧みる目的で書き始めた。
 一つこの場を借りて謝っておきたいのは、プロフィールに書いている年齢が詐称だということだ。プロフィール通りにいくと、私はまだ十九になる。でも、ここでこれから色々な断片を繋ぎ合わせていく上で、その年齢はあまりにも無理が出てくる。なので、ここで嘘をついたことを謝ります。ごめんなさい。
 本当は一九八六年生まれの今年二十四歳だ。詐称した理由は…ただ、まったく違う人物設定を立てたかっただけだ。
 私にとって小説は、「呼吸」という生の産物であり、一方で「浄化」という死へ向かうための棺でもある。小説という名のコッペリアに封じ込めた様々な過去を、自分という存在を、パレエドのような華やかな葬列にのせていく、そうやって私の生は紡がれる。
 これから紡ぐ話を、実話として信じる信じないは、読者の方にお任せします。





作品名:コッペリアの葬列 作家名:紅月一花