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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(2)

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(二十一)
純輔の出演する映画『遠い祖国』の企画進行がとても特殊な進め方だった。
ハリウッド映画ではとても珍しい事だけれど、純輔はオーデションに受かって直ぐに
出演契約を交わし、その後直ぐに撮影が始まるという、異例な事つづきで、当然の事
ながら、純輔は日本へ一時帰国する事も出来ずに、1年以上、準備期間や撮影が続き、とにかく過密スケジュールで日本へ帰国する事が出来なかった。
言葉や生活習慣そして、映画撮影の進め方の違いに戸惑いながら、その繊細な精神性
から、人好きあいの苦手な、純輔は、いくつもの、神経ハゲが出来て、神経性の胃炎
を何度も繰り返しながらも、強い精神力と集中力で乗り越えて行った。
演技者として素晴らしさと人間性を認められて、少しずつ周りの人たちが味方になっ
てくれる事も増えて、長い一年の日々に最善を尽して、純輔が出演する場面の撮影が
終了して、ひとまずは帰国する事が出来た。
帰国しても、一年以上、日本での仕事をやっていなかった分、日本で努力をしなけれ
ばならず、又、ハリウット映画に挑戦した事を、マスコミにもかなり知られて行き、
インタビューなどを受ける回数もだんだん多く成って行き、過密なスケジュールで
の日々は、さすがの純ちゃんも体力、気力共にぎりぎりの状態だった。
純ちゃんの帰国を待ちわびていた私は、純ちゃんのいない間に、自分ではとても頑張
ったと思うけれど、相変わらずの体力のない、やせっぽちの体だった。
純ちゃんがアメリカに行く前に心で約束した事!
「本当の純ちゃんのお嫁さんになる為の努力!!!」
約束を守るために、プールへ通い、プールの中を歩いたり、自宅の近くをゆっくりと
走ってみたり、時には母とふたりで電車で高麗まで行き、日和田山を少し登った、胸
の苦しさも母がとても嬉しそうな笑顔と「もう少しよ、頑張って!」と、かけてくれ
るひと言が私を勇気づけてくれた。
私は、幼い頃から病弱で母に心配ばかりかけて来た、それが、純ちゃんに恋した事で、どんな事でも、前向きに物事を考えられる娘の姿が輝いて見えると言って、父も母も
喜んでくれていた。
母はどんなに自分が大変な時も明るく笑顔でいてくれる人だ!
私は本当によく運動をした、又、基礎体力のつく、漢方薬を飲み、食事に気をつけて、健康に良いと考えられる事すべてにトライして頑張って来た一年間だった。
だが、私の体は、ひどく免疫力が低下している為に、紫外線にとても弱くて、完全防
備の厚化粧をしての外出であっても、時には、紫外線火傷をして、特に顔が、お岩さ
ん状態になって辛い事も何度かあった。
けれど、辛く、苦しい時はいつも、純ちゃんの頑張る姿を想いながら、切り抜けられ
る自分が不思議なくらいにどんな事も耐えられた。
その成果が出て来たのか、食事も少しは多く食べられるし、体調が悪くて寝込む事も
少なくなって来ていたと自分では思っていた。
純ちゃんは帰国してからも、電話で話す以外には会えずに、テレビの芸能ニュースな
どで、インタビューを受けている姿を観られるだけだった。
けれど、やはり、純ちゃんの素敵さと共に、健康的で男性としての魅力と共に男とし
ての本能を垣間見る瞬間が、何度もあった。
美しい女性インタビュアーとの会話は、私といる時の表情とは少し違っていると、ど
うしても感じてしまう自分の惨めさとジェラシーを感じる自分の狭い心が悲しかった。
おそらく純ちゃん自身が気づいてはいない、男としての本能がそうさせる動きや姿な
のだろう・・・
純ちゃんの、ほんの一瞬だが、野獣のような目を輝かせて、私には見せた事のない輝
く瞳を見た時、女としての性を嫌と言うほど感じてしまう・・・

(二十二)
純ちゃんの少年のような無防備な眼差しと大人の男の本能がよび覚ます感情から!私
は純ちゃんの心の中をのぞいてしまった気がした。
純ちゃんは、自分自身も戸惑いを感じても立場上なれぬ日常に追われる、ともすれば
自分を見失うほどの精神状態に必死で仕事をこなしていた。
時には疲労感から、私の知っていた優しい彼の姿ではなくなったような厳しい顔になる、忙しくスケジュールに追われた生活だった。
そんな状況の中でも私に逢う時間をなんとか作ってくれて、我が家に来てくれて、両
親に帰国の挨拶をしてくれた。
いちだんと素敵さ、かっこ良さ、洗練された人間として、やはり、純ちゃんを眼の前
で見て、言葉が出ないほど心が弾んで、感情が昂ぶる想いで嬉しかったけれど、一年
ぶりに逢えたふたりにとってあまりにも切ないほどの短い時間だった。
ほんの一年前まで国内で、さほど有名でなかった目立たない映画俳優が、ハリウッド
映画に出演して、しかも、準主役級であることが、芸能界やマスコミがほおって置か
なかった、某、国営放送までが純ちゃんを取材して、ミニ特集を組むほどの扱いだっ
たから、そう言った点からも、私の存在は隠された立場になるしかなかった。
まだ、純ちゃんが出演した、ハリウッド映画「遠い祖国」は日本での公開も決まって
はいない現実とのギャップが、純ちゃんの忙しさと、精神的な苦痛だけが、攻めてい
るように、純ちゃんの姿を見ていなくても辛さが分かって重くなる心が苦しかった。
逢えないけれど純ちゃんとの電話だけを頼りに、ひと月が過ぎた頃、やっと、純ちゃ
んから、デートのお誘いの連絡があって、アメリカへ出発する前の日に二人で泊まっ
たホテルへタクシーで駆けつけたが、まだ、純ちゃんは、来ていなかった、私は、ひ
とりで、待ち合わせ場所である、このホテルのティルームで、待っていても、純ちゃ
んは、中々、来てくれなかった。
どの位の時間が過ぎただろうか、ひとりで不安な気持ちと、逢える喜びの感情が複雑
に絡み合って来る!
芸能界で、知られる存在になった純ちゃんのキラキラ輝く姿はやはり何処かで、私の
知らない人間に成ってしまったような思いが私の心の片隅でもやもやと曇らせて
行く・・・
どう頑張っても、純ちゃんのような健康で元気な心や体にはなれなかった悔しさと惨
めさもまた、不安感を大きくして行った。
突然、静かな音楽が流れる店内に私を呼ぶアナンウスが流れて、私は、急ぎ、ホテル
のフロントに行った、私宛の純ちゃんからのメッセージが届いていた。
「急に仕事が入ってしまい、時間が少し掛かりそうなので・・・」
「予約してある、この前の部屋で、待っていて・・・」
「すこし、部屋で休んでいて欲しいと書かれていた!」
私は確かに、精神的に疲れていた!
純ちゃんからの突然の呼び出しで慌てて家を出て来た事や待っている時間の中で、い
ろんな思いに至って、緊張感からの疲れや不安感が、私をすこし体調を悪くしていた。
純ちゃんの何気ないこうした気使いが、なお辛く心穏やかではいられない惨めさをつ
のらせて悲しい気持ちになる!
いつか見たあの、美人インタビュアーへ向けられた純ちゃんの無防備で本能的な男を
魅せつける姿や感情の純ちゃんが恨めしいと思うし、あの女性に嫉妬している自分が
嫌でたまらない思いにしていった。
いつしか、私はベットに横になり眠ってしまったのだろうか?
何処か暗闇の中をひとりで歩いていて、遠くで、純ちゃんの声が微かに聴こえる!