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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1)

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そして、私に、唇を重ねて、キスを、何度も・・・
でも、それ以上の事はせずに、私を抱き寄せただけで・・・

(二十)
しばらくはふたり、みつめ合いながら、時には彼の唇が私の唇を覆い包み込んで長い
キスをして、彼は私の体のすべてを胸の中で抱きしめながらも・・・
純ちゃんは、私に対して、それ以上の行為はせずに、抱きしめて、私の苦しいほどの
息遣いに・・・
彼の愛情表現も健康的な欲望も抑えているように、一瞬、苦しげな厳しい顔になって、静かに、私から離れて行った。
そして、まるで、嘘のような、冗談のような言葉で!
「姫!、もうしわけございません!」
「大変失礼な事を致しました!」
「この上はどのようなご処分を受けましても・・・」
「甘んじて、お受けいたしますので、・・・」
「どうぞ、充分なご処置を、お授けくださいませ!」
そう言った顔が、可笑しくもあり、切なくもあり、私は、どんな言葉で返事すればよ
いのか?
世間で言う、三十七歳、男盛りの健康な肉体の純ちゃんのこのようなしぐさは、すべて、私の体を気づかう愛情の深さだと、私は分かっていたから、こんな時、切なさと申し
訳ない気持ちでつらかった。
私は純ちゃんにどう接し、話せば良いのか、とっさの言葉も考えも浮かんでこないふ
たりのぎこちない空気だけが残った。
その時、もう二度とこんな辛い思いを純ちゃんにさせてはいけない!私は固く決心
した!、どんな事をしても、健康な体になって、純ちゃんの本当のお嫁さんになり、
私のすべてを捧げたい!!!
『何の気遣いも無く愛し合えるふたりになりたい!』
その願いが叶う時は、きっと、純ちゃんのアメリカから帰国した時なのだと、純ちゃ
んの心に添う事が出来るように私、頑張るからね!
『純ちゃん、その時まで、待っていてね!』
そう、心で、約束した時、不思議なほど、純ちゃんから、力強い元気さが私に伝わっ
て来た、そんな気持ちがして、心も体も強くなったように感じた!
次の日、私を家に送り届けてから、純ちゃんはひとりで、アメリカへ旅立った。
アメリカ合衆国、ロスアンゼルスは、初めての地であっても、純輔は観光などするど
ころではなかった。
ロスについて直ぐに、緊張の続く中で、二次、三次と、オーデションが進み、純輔は
幸運にも最終のオーデションにも、合格出来た。
映画の主役ではないが、とても重要な役を引き受ける事になった。
ハリウッド映画「遠い祖国」は、ある、有名な監督のもとで、多国籍の俳優が出演す
る作品だ!
主役は、日本からアメリカへの移民2世の女性と白人男性とのラブロマンスを軸に、
太平洋戦争によって愛を引き裂かれる苦難の日々を描くものだった。
「李 純輔」が演じるのは、主役の女性の兄の役だった。
子供時代は、在米日本人の子供が演じ、純輔は太平洋戦争前のボストンで大学に通う
大学生からの出演だった。
三十七歳の純輔ではあったが、さほど気にならない大学生の姿であった。
もちろん、その頃の日本の大学生のように学生服を着るわけではないので、一九三〇
年頃のアメリカの大学生の生活を描き、大学を卒業し、父が営む、工場を継ぎながら、戦争によって、強制収容所での暮らしで、家族を守るために、自分の考えや思想とは
裏腹な生き方を強いられて、アメリカ人として、戦場に向かい、又、間接的ではあるが、長崎に落とされた核爆弾の移送にも関わり、その事で多くの同じ民族である日本人を
殺してしまった事を苦しみながら、アメリカで戦後を生きる人間を演じた。
精神的にも本当のアメリカ人としてもなじめず、日本人としても生きられない事の苦
しみ、戦争での死への慄然とした恐怖や心の葛藤、混乱する精神状態を描く、二十代
から、五十代までを演じた、純ちゃんの素晴らしい演技は、映画の公開前から、アメ
リカは元より、日本のマスコミの話題になって広く伝わって行った。

       <つづき、21話~は、ブスな心が恋してる・・・(2)へ掲載します>