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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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17. 幽霊、絶望する

幽霊が、走ろうとしている。
幽霊が、全速力で走ろうとしている。
これはおかしな事だ。
何故なら、幽霊には足がないからだ。
幽霊は、もがきながら何処へも行けない。
幽霊は、やがて後ろを振り返り、自分が1mmも
進んでいなかった事に気付く。

沢村は、愛を望んでしまった。
その為に絶望した。
俺は、心を開ける友を望んでしまった。
その為に沢村があんな目に会った。
何故なら、当たり前の「罰」だから。
何も望まないのが、俺と神の間で結んだ契約
だと思っていた。
契約違反は、罰せられる。
駐禁の切符を切られるのと同じ位当然の報いだ。

衰弱、進む。

やっぱり新田さんに相談する・・・という選択肢は
在り得るのか?いや、無い。
また心配してでもしてもらう気か?
それで多少は満たされた気になって、
可哀想な自分に満足して、カタルシスを得るのか?
ふざけんな。最悪だ。

愛だとかふざけた事をぬかす気だろう。

俺の事だからよく解る。
お前は新田さんを好きになり始めている。

でもお前の頭の中はエロしか無ぇんだよ。猿。

彼女に迷惑はかけられない。
これ以上、誰かと話したって、どうにもならないだろう。
いつだって、俺が取るべき行動や発言に、
正しい答えは一つだけしかないはずだ。
でなければ、学校も教育もあんなに
大学に行って、普通に就職をする「楽」なルート
を勧めたりはしない。学校で競馬やパチンコを
教えて、将来は博打に全財産を費やすギャンブラーに
なりましょう、なんて一言でも言ったか?
実際には、選択肢の一つとして、その人生も
現在の人生と密接な平行線上に、しかもふとした弾みで
乗り入れてしまう程の距離に確かに存在しているのに。
どれが正しい生き方で、どれが間違った生き方です、
なんて決めるのは誰だ?
異端者にはとことん厳しい世界だ。
異端者には、目に見えない規制や弾圧、迫害や蔑視など
とにかく住み難いように、自殺するように、
この世界は出来ている。
もう、何処にも逃げ場なんて無いんだ。

俺たちは何も望まないようにしてて、
だけど、人間だからついうっかり、
何かを欲しがったり、強くこう在りたい、とか思ってしまう。

それって、そんなにいけないことなのか?
なぁ、俺たちはそんなに多くの物を望み過ぎたのか?

世界の絶望や社会の苦渋に